生まれる、成長する、学ぶ、悩む、暮らす、産む、寄り添う、過ごす、老いる…。 どんなときも 自分らしく、そして 健康に生活するために、産婦人科医から 身体のこと、体調のこと、病気のこと、予防や対策などをお伝えします。

「おりもの」って一体何?

2025/02/25

思春期から老年期まで全ての女性へ向けて、産婦人科医で女性ヘルスケア専門医の山西恵医師に、女性特有のからだの不調や病気のことを伺います。

毎日の生活をもっと元気に、豊かに! 一緒に学んでいきましょう。

 

これまでの女性のライフイベントや月経と少しテーマを変えて、「おりもの」についてお話しします。

 

産婦人科の診察では「おりものの量」や「おりものの色」について質問することがあります。けれど、そもそも「おりもの」ってどういうもので、どういう時に出るものなのかはっきりと知っているという人は少ないのではないでしょうか?

 

体の状態や病気により、おりものに変化が出ることもあります。正常な状態を知っていれば、ご自身の体に変化が出た時に気づくサインとなります。

 

今回は、「おりもの」に関する知識をお伝えしたいと思います。

 

 

正常なおりものとは?

 

おりものは、子宮や腟からの分泌物(分泌液)です。

思春期になると、おりものの分泌が自分でわかるようになります。正常なおりものは、透明から白色で、においはほとんどありませんが、デーデルライン桿菌(かんきん)という自浄作用を保つ善玉乳酸菌が存在しているので、少し酸っぱいにおいがすることもあります。このデーデルライン桿菌の働きによって、病原体の侵入や増殖を防ぎ、腟内を清潔に保っています。

 

 

おりものの性状は、月経周期によって変化します。

排卵期には、「牽糸性(けんしせい)」と呼ばれる糸を引くように伸びる、水っぽい透明のおりものが出ます。このようなおりものは、精子が子宮頸管を通過し卵子に到達するのを助ける働きがあります。

排卵期を過ぎると、月経が始まるまでに、おりものは白っぽく、どろっとした性状に変化します。

 

 

おりものが水っぽい灰色で、いつもより量が多かったり、生臭いにおいがしたら?

細菌性腟症の可能性があります。

「腟炎」は腟が炎症を起こしている状態ですが、「腟炎」を起こしていなくても、腟内の細菌叢(腟内フローラ)のバランスが崩れていることがあり、その状態を細菌性腟症といいます。おりものが増えたり悪臭がすることもあれば、無症状の場合もあります。自然に治ることもありますが、細菌叢のバランスが崩れていると、腟内の自浄作用が低下し、病原体が侵入しやすくなります。

おりものの検査で細菌叢のバランスを評価し、細菌性腟症がどうかを判定します。細菌性腟症であれば、内服薬や腟錠などで治療します。

 

 

おりものが黄緑~緑色で、量が増えたり、腹痛を伴うことも…そんな時は?

クラミジアや淋菌による性感染症の可能性があります。

炎症が強い場合は、性器出血が起こることもあります。無症状のことも多いですが、子宮頸管から子宮・卵管を通って腹腔内まで炎症が波及した場合は、腹膜炎を引き起こし、腹痛や発熱を生じることがあります。抗菌薬の内服や点滴で治療します。

 

外陰部や腟内がかゆくて、ぽろぽろしたおりものが多く出る場合は?

カンジダ腟炎の可能性があります。

カンジダ菌は、真菌の一種で、腟や皮膚に存在する常在菌です。カンジダ菌が異常に増殖した時、腟や外陰部に炎症が起き、おりものが増え、かゆみを伴います。

免疫力が低下した時、妊娠中、他の感染症で抗菌薬を使用した時など、腟内細菌叢のバランスが乱れ、カンジダ菌が増殖することがあります。月経周期に伴って繰り返すこともあります。腟錠や外用薬などで治療します。

 

おりものが茶色がかっていたら「出血」を疑いましょう

おりものが茶色い場合は血が混じっている可能性があります。

排卵期出血などの問題のない出血もありますが、何が原因で出血しているかは、診察しないとわからないことが多いです。

 

 

ホルモンバランスの変化による性器出血のこともあれば、良性や悪性のものも含めて腫瘍からの出血であったり、実は血尿や肛門からの出血の場合もあります。出血が続くようなら、必ず産婦人科を受診しましょう。

 

 

閉経に近づくと、おりものの量も少なくなる

閉経後には、女性ホルモンであるエストロゲンが減少するため、おりものが少なくなります。エストロゲンが減少することにより、腟や外陰部の皮膚が萎縮し、炎症を起こすことがあります。腟内の自浄作用が低下することで細菌性腟症を伴うこともあります。

 

腟内の炎症が起きていると、おりものが増えたり、かゆみや痛みと感じることがあります。不快な症状があれば、ホルモン治療などの選択肢もありますので、産婦人科で治療法を相談してみてください。

 

 

おりものは、女性の健康状態を示す大切なバロメーター

おりものは、腟や子宮をまもる大切な役割を担っています。おりものの状態で健康状態やトラブルのサインが読み取れます。

 

普段から月経周期によるおりものの変化や体調を観察しましょう。いつもと違うなどの症状があれば、いつでも産婦人科で相談してください。

 

 

 

山西 (やまにし めぐみ)

日本産科婦人科学会産婦人科専門医・指導医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。臨床遺伝専門医制度委員会臨床遺伝専門医。

学生時代はバレーボールを楽しみましたが、現在は育児と肩の痛みで鑑賞専門です。健康管理の大切さを身に沁みて実感しているため、いつかバレーボールを思い切りプレーできる日を夢見て、体力づくりをしていきたいです。

悩める患者さんやご家族のご希望に寄り添った診療を心がけています。すこやかな日常が送れるようサポートしていきたいと考えています。気軽にご相談ください。

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