日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

腸の調子は、いかがですか?

2018/08/02

夏場は冷たいものをたくさん摂ったり、夏バテ予防にと食べ過ぎたりしてしまい、胃腸の調子を気にする方もいらっしゃると思います。

 

そんな時、腹痛が続いたり、下痢、血液混じりの便が出ると、「ひょっとして…病気では?」と考えてしまいますね。さて、どんな病気だと思いますか?

食生活に気をつけて2~3日で治まったなら、一過性の腹痛や下痢かもしれません。

 

しかし、このような症状が続いたり、くりかえし起こる場合には、炎症性腸疾患が考えられます。他に癌やポリープなども考えられますが、今回は「炎症性腸疾患」について、消化器内科の浦井俊二先生にお聞きします。

炎症性腸疾患の代表的なものに、潰瘍性大腸炎があります。現在、厚生労働省の指定する難病は300以上あり、潰瘍性大腸炎もその1つです。全国で患者さんは20万人を超えると言われ、女優さんやプロ野球選手、政治家などで病気であることを告白している方もおられ、認知度は高いと言えるでしょう。

 

発症原因は今なお不明です。腹痛や下痢、血液混じりの便などの症状が続く場合は「そのうち治るだろう」と思わず、是非、かかりつけ医にご相談ください。

潰瘍性大腸炎が疑われた場合、血液検査やレントゲン、大腸内視鏡検査などが行われます。

 

血液検査で貧血や炎症反応の上昇、低栄養が疑われ、大腸内視鏡検査で粘膜のただれや出血があり、生検(大腸粘膜の一部をつまみとる検査)でも炎症が確認されると、潰瘍性大腸炎と診断されます。その場合、より大きな病院へ紹介されることもあります。

 

治療は、抗炎症薬の内服や座薬、注腸薬があります。軽症から一部の中等症の場合は、この(これらの?)薬だけで良くなります。しかしながら、効果が不十分な場合にはステロイド剤を使います。ステロイド剤は強力に炎症を抑える優れた薬剤ですが、副作用も多く長期に使用できません。ステロイド剤が効かない場合や、薬の量を減らすと症状が悪化する場合は、血液から異常に活性化した白血球を取りのぞく血球成分除去療法や、免疫調整剤、生物学的製剤などを用いる治療、さらには手術が必要な場合もあります。

治療の効果で、症状が改善することを寛解(かんかい)と呼びます。完全に治った訳ではないですが、症状が出ない状態です。寛解状態をできる限り維持することに医師は心血を注いでいます。しかし、この病気は、いくら注意をしていても状態が良くなったり、症状がひどくなったりを繰り返すことがあります。

 

長い付き合いになることが多い病気です。時には食事制限が必要になりますが、寛解すると強い食事制限は必要ありません。アルコールもたしなむ程度であれば許されるでしょう。運動もできますし、女性であれば妊娠、出産の制限もありません。しかし、調子が良いからと服薬をさぼると悪化してしまいます。また、長い経過を経て癌が発生することもあるので、定期的な検査も必要です。

 

つい「そのうち」と思い、受診を先延ばしにしてしまいがちですが、気になる症状が続く時は、早めにかかりつけ医に相談しましょう。かかりつけ医の先生方と連携しながら、治療していきたいと考えています。

 

 

 

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