生まれる、成長する、学ぶ、悩む、暮らす、産む、寄り添う、過ごす、老いる…。 どんなときも 自分らしく、そして 健康に生活するために、産婦人科医から 身体のこと、体調のこと、病気のこと、予防や対策などをお伝えします。

思春期に起こりやすい月経トラブル

2024/11/26

思春期から老年期まで全ての女性へ向けて、産婦人科医で女性ヘルスケア専門医の山西恵医師が、女性特有のからだの不調や病気のことを解説します。

毎日の生活をもっと元気に、豊かに! 一緒に学んでいきましょう。

 

 

思春期は子どもから大人へ変わっていく時期にあたり、体や心にとても大きな変化が現れるときです。具体的にはどのような時期を指すのでしょうか? 

 

日本産科婦人科学会が発行する用語集・用語解説集によると、思春期とは「第2次性徴出現から初経を経て、月経周期がほぼ順調になるまでの期間をいう。年齢的には89歳ごろから1718歳ごろまでの間で、乳房発育に始まり、陰毛発生、身長増加、初経発来で完成する。」と定義されています。

 

急に身長が伸びる、月経が始まるなど、自分でも大人になっていっているとわかるほどの変化があるので、変わっていくことに不安を覚えたり、恥ずかしさや戸惑いを感じてしまったりします。

 

なかなか自分を受け入れられないという時期もあるかもしれませんが、そのような心身の変化は自然なことです。

ここでは、思春期に起こりえる月経トラブルや対応について紹介したいと思います。

 

思春期の月経に関する現状

2016年のスポーツ庁委託事業「子供の体力向上課題対策プロジェクト」では、中高生を対象に、月経に関する実態調査が行われました。

対象となる中高生は、月経に関連する以下の症状を感じていました。

・月経痛……………71%

・月経前症候群……34%

・月経過多…………25%

実に、71%もの中高生が月経痛を感じているという結果でした。

 

月経痛の程度を表すために、以下の項目が挙げられていました。

・我慢している……………43%

・薬で我慢している………35%

・勉強・体育がつらい……15%

・1日寝込む…………………2%

我慢している人が多く、積極的に対処されていないことがわかります。

 

 

また、教育現場では、その事実を把握している教育関係者は少ないということも明らかになりました。中高生が月経のことで相談する先としては、保護者が1番多いとされています。他には先輩や友達、ネットで調べることが多いようですが、誰にも相談しないという人も少なくありません。

 

月経にまつわる症状は、学業や運動に大きな影響を与えます。

月経痛が強いと、勉強や体育はもちろんのこと、日常生活を送ることすらしんどいと感じることもあります。

 

月経の量が多いと、体育の時間に漏れないか心配で十分に動けなかったり、授業や試験中も、それを気にして集中できなかったりします。

月経前には乳房痛が出て、走るだけで痛みを感じ、走ることが億劫になることもあります。また、月経前の気分の落ち込みやイライラ、むくみを強く感じることもあります。

 

 

このように、個人差はありますが、月経に関わる症状によって健やかに学校生活を送ることが難しくなることがあります。また、思春期に強い月経痛を認める女性は、将来の子宮内膜症の罹患率が高いとされています。

 

しかし、「月経はつらいもの」「多少症状があっても我慢すべきもの」というわけではありません。

妊娠・出産を含めた将来の健康につながるように、うまく付き合っていく必要があります。もし、月経による症状で困っているのであれば、症状を和らげる方法を提案できる可能性がありますので、ぜひ産婦人科で相談してください。

 

思春期の産婦人科診察

ほとんどの思春期の女性にとって、内診・経腟超音波検査のような婦人科診察は抵抗があります。どうしても抵抗がある場合は、最初から内診・経腟超音波検査が必ず必要というわけではなく、負担の少ない検査や代わりの方法などを提案いたします。お話をした上で、最終的に本人の希望に沿って検査を進めますのでご安心ください。

 

 

初めての月経に適している時期

思春期は、第2次性徴が出現したときから始まりますが、第2次性徴の発現する時期には個人差が大きいです。日本産科婦人科学会が定めた定義では、乳房発育が7歳未満、陰毛発生が9歳未満、初経が10歳未満でみられた場合を「早発思春期」としています。

 

いずれの場合も、特に問題ないこともありますが、何か原因となる疾患が隠れていることもあります。月経が早く来た場合は低身長になることがあり、治療を必要とする場合があります。月経が遅い場合は、女性ホルモンであるエストロゲンが必要な時期に、エストロゲンが欠乏することにより、骨や血管、代謝に影響を及ぼします。

 

成長や将来の健康のために、初経発来に適した時期(10歳~14歳まで)がありますので、それより早い場合は小児科や産婦人科を、また反対に、14~15歳になっても月経が来ない場合は産婦人科を受診し相談しましょう。

 

 

また、初経後の月経周期でも悩んでいる人は多いと思います。

思春期が終わった後、通常の月経周期は25日~38日周期です。しかし、初経後1年未満は月経周期が安定しないことが多く、月経周期異常かどうかは判定できません。つまり、初経後1年間は無月経の期間があっても心配しなくて大丈夫です。

 

初経後1年以上~3年未満は、21日~45日が正常といわれていますので、その範囲からはずれるようなら、産婦人科受診を検討してください。

また、初経開始後1年を経過していて、月経周期が90日をこえるようであれば、早めに産婦人科を受診しましょう。

 

このように、思春期は心身ともに大きな変化があり、将来の健康にとっても大切な時期です。月経に関連する困ったことや、つらさを感じていることがあれば、気軽に相談してください。

 

 

さて、次回も「月経」のテーマが続きます。

子どもの月経に対するケアについて、保護者の方々へ向けた内容をお伝えします。

 

山西 (やまにし めぐみ)

日本産科婦人科学会産婦人科専門医・指導医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。

学生時代はバレーボールを楽しみましたが、現在は育児と肩の痛みで鑑賞専門です。健康管理の大切さを身に沁みて実感しているため、いつかバレーボールを思い切りプレーできる日を夢見て、体力づくりをしていきたいです。

悩める患者さんやご家族のご希望に寄り添った診療を心がけています。すこやかな日常が送れるようサポートしていきたいと考えています。気軽にご相談ください。

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