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生まれる、成長する、学ぶ、悩む、暮らす、産む、寄り添う、過ごす、老いる…。 どんなときも 自分らしく、そして 健康に生活するために、産婦人科医から 身体のこと、体調のこと、病気のこと、予防や対策などをお伝えします。
2024/10/22
思春期から老年期まで全ての女性へ向けて、産婦人科医で女性ヘルスケア専門医の山西恵医師が、女性特有のからだの不調や病気のことを解説します。
毎日の生活をもっと元気に、豊かに! 一緒に学んでいきましょう。
女性がスポーツを楽しむときに、切っても切れない存在が月経です。試合の日に月経が重なってしまったり、月経周期による体調の変動を気にしなければならなかったりと、パフォーマンスの点で月経が課題となりがちです。
女性アスリートにとって、月経周期の管理は、健康維持やパフォーマンスの維持にとても大切です。
自分の月経周期を把握しておくと、体調やパフォーマンスにどのような影響があるかを把握できます。月経開始日や期間、体調の変化などを記録しておくことで、次回の月経の予測やトレーニングの調整がしやすくなります。月経前症候群(疲労感、腹痛、気分の落ち込みなど)がある場合、それに合わせた休息なども必要です。
月経前・月経中は、個人差がありますが、体力や集中力が低下することがあります。無理をせず、軽めのトレーニングやストレッチに切り替えるのも良い選択です。逆に、月経中・月経後に調子が良いと感じる人もいます。自分の体調にあわせてトレーニング強度を調整することが重要です。
月経移動について
月経の時期は、競技の試合などに合わせて移動させることができます。
中用量ピルで一時的に月経を移動させる方法や、低用量ピルによって継続的にコントロールする方法などがあります。
どのような方法を選択するかは、体調や競技の状況に応じて相談できます。
低用量ピルを活用する方法
低用量ピルの効果として月経量の減少や月経痛の緩和につながります。低用量ピルを使うことにより「コンディションが良くなった」「パフォーマンスが良くなった」と感じるアスリートも多いです。
女性アスリートが低用量ピルを使用する際のよくある質問
――低用量ピルを使用すると体重が増えますか?
体重増加は、ピルの一般的な懸念の1つですが、実際には多くの女性で顕著な体重増加は見られません。低用量ピル内服と体重増加は関連がないとされています。ピルの開始後にむくみを感じることがありますが、これは一時的なものであることが多いです。また、むくみが出にくい種類のピルもありますので、医師と相談してください。
――低用量ピルを使用すると月経が止まることがありますか?
低用量ピルの使用により、月経が軽くなるか、場合によっては止まることがあります。これは、ピルに含まれるホルモンにより子宮内膜が薄くなるためであり、正常の反応です。ただし、月経が完全にと止まる場合や異常な出血がある場合は、医師に相談してください。
――低用量ピルを長期間使用すると、妊娠しにくくなりますか?
低用量ピルを内服することで妊娠しにくくなるということはありません。むしろ、思春期に月経痛が強い場合は、潜在的に内膜症を合併している可能性があり、低用量ピルを内服することで内膜症の進行を抑制するため、将来の妊娠に向けて良い状態を保てることが期待できます。
――低用量ピルは運動能力に影響しますか?
低用量ピルが運動能力やパフォーマンスにどの程度影響を与えるかは、それぞれの体質やピルの種類によりますが、大半のアスリートはピル使用後もパフォーマンスを維持できます。ピル開始後は一時的に体調が変化することがありますが、長期的には大きな影響を与えないとされています。
月経が止まったら放置せず対策を取りましょう
皆さんは、毎月来ている月経が止まってしまったら、どうしますか?
来ないほうが楽でいいなと思いますか?
それとも、少し心配になりますか?
思春期は成長が著しく、女性アスリートにとって、エネルギーと栄養の適切なバランスが必要不可欠です。極端な食事制限や激しいトレーニングによってエネルギー不足が続くと、月経不順や無月経が起こる場合があります。
さらに、体を支える骨にも影響を与えます。
骨の健康にとって、カルシウム摂取だけでなく女性ホルモン(エストロゲン)の役割は重要で、無月経による低エストロゲン状態が続くと、骨の代謝に影響を与え、骨密度が低下し、疲労骨折などのリスクが高まります。
このように、思春期の女性アスリートの月経管理は、スポーツをしている間だけでなく、将来の妊娠や骨の健康に関わってきます。家族や指導者など周りの人たちが正しい知識を持ち、体調の変化に早く気づき、産婦人科受診につなげられるようにすることが大切です。
スポーツをする全ての女性にとって、月経は自然なサイクルの一部です。
体の変化を受け入れ、適切にケアし上手に付き合うことで、健康的にスポーツを続けていきましょう。
次回も引き続き「月経」がテーマです。
思春期に起こりやすい月経トラブルを取り上げます。
山西 恵(やまにし めぐみ)
日本産科婦人科学会産婦人科専門医・指導医、日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門医。
学生時代はバレーボールを楽しみましたが、現在は育児と肩の痛みで鑑賞専門です。健康管理の大切さを身に沁みて実感しているため、いつかバレーボールを思い切りプレーできる日を夢見て、体力づくりをしていきたいです。
悩める患者さんやご家族のご希望に寄り添った診療を心がけています。すこやかな日常が送れるようサポートしていきたいと考えています。気軽にご相談ください。