病院では医師、看護師、助産師、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、診療放射線技師、臨床工学技士などいろいろな専門職が集まり、日々の治療を支えています。患者さんの身体も心もケアできるようにと、日々努めている仲間たちを紹介します。

臨床検査技師インタビュー 〜 ISO取得後、初の新卒〜

2022/11/23

2021年に、信州大学医学部保健学科を卒業後、新卒で日赤和歌山医療センターに入職した臨床検査技師の熊野なつさん。

検査部が国際規格「ISO 15189」を取得してから初の入職者で、血液検査を担当しています。

 

ISO認定に基づいた教育プログラムに取り組みながら、病院の硬式テニス部に所属し、スポーツを通じて他の職種との交流も楽しんでいるという熊野さん。仕事のやりがいや今後の目標について聞きました。

 

 

現在の仕事内容は?

検査部の検体検査部門に所属しています。検体検査は、血液、生化学、免疫、輸血、微生物などいくつかの部署に分かれており、血液検査を担当しています。朝7時15分からの早出勤務もありますし、当直勤務もあります。

 

 

臨床検査技師4人で、当医療センターの血液検体の多くを取り扱っているので、多い日には検査装置にかける検体数が1,000を超えることもあります。顕微鏡で観察する標本は、一日平均して40〜50枚ほど。それを手分けして行っています。採血業務や骨髄穿刺の介助をするため、患者さんと触れ合う機会もあります。

 

医療系でも、看護師や薬剤師などさまざまな職種がある中で、臨床検査技師を志した理由は?

高校在学中に、医療系の職業への興味を持ちました。臨床検査技師をはっきりと意識したのは、父の人間ドックの検査結果を見たことです。異常値が出ている項目があり、再検査を促す通知が届いていたんです。結果的に大事には至らなかったのですが、もし、体に何かが起こっていたとしたら、その検査結果が発見につながっていた訳です。病気を見つけられる、生活に必要な職業だと思ったので、臨床検査技師の資格を取得できる学科に進学しました。

 

 

病気の早期発見につながる重要なポジションですね。

就職先に日赤和歌山を選んだ理由は?

和歌山市出身なので、県外進学時から地元に戻って働きたいと思っていました。臨床検査技師の就職は、病院か、検査試薬の開発や販売を担う企業か、大きく2つの選択肢があります。まず、どちらか考えたときに、患者さんに近い病院を選択しました。そして、たくさんの職種や検査に関われる大規模病院に絞りました。

 

 

和歌山県内にも規模の大きな病院がいくつかあるので、大学3年生のときに当医療センターに見学申込みをして、1週間、実習しました。全ての検査部門を回ったのですが、皆さんすごく人柄があたたかくて、アットホームな雰囲気でした。また、認定資格を取得されていたり、取得を目指して頑張っている先輩が多くて、モチベーションの高さにとても刺激を受けたので、日赤和歌山にしようと思い、採用試験を受けました。

 

仕事中も、アットホームな雰囲気ですか?

先輩から話しかけてくれたり、1つ質問するとその答え以上のプラスアルファの知識や情報を返してくださったりと、いつでも誰でも優しくしてくれるので居心地がいいです。忙しい職場ではありますが、常にお互いを気遣い合いながらテキパキされていて、尊敬しています。

 

また、技師長との面談が年に1回あります。気になることや将来の希望があれば、面談で伝えることができるのですが、技師長からも「しんどいことはない?」と聞いてくれるので、風通しのいい職場だと思います。

 

 

検査部門は「縁の下の力持ち」と思われていて、どちらかというと院内ではあまり目立たない部門です。でも、みなさんが高い目標を持っていたりするので、自然と私も頑張らなければという気持ちになります。私も、来年は緊急臨床検査士の資格取得にチャレンジするつもりです。このまま血液検査の配属が続けば、二級臨床検査士(血液学)も取ってみたいと思っています。

 

 

成長できる環境が整っているんですね。

ほとんどの先輩が認定資格を取って専門性を身につけていく背中を見ているので、「私も」という気持ちになりますね。大学院を修了している先輩もいますし、規模が大きい病院なので、部署異動もあって、できることを増やしていけます。将来、患者さんに直接お会いして心電図やエコーなどの検査をする生理検査部門にも行きたいので、技師長面談で希望を伝えています。

 

スキルアップのためには長く働くことも大切なので、就職前から福利厚生も気になっていました。検査部は男性より女性が多い職場ですが、産休・育休、時短勤務の制度を活用して、ほとんどの先輩が出産後も復帰されていたり、定年まで勤務されているので、その点でも安心して働けます。私の所属部署の課長補佐も女性ですし、他の部署ですが女性の課長もいるので、キャリアアップも視野に入れられます。

 

 

検査部は、医師に診断材料を提供する重要な役割を担っています。

プレッシャーや不安を感じることはないですか?

入職直後は強い緊張があり、わからないことが出てくるたびに不安に駆られて、上司に質問ばかりしていました。見逃したら…という怖さがあったのですが、そんな中で、初めて自分の気づきで血液の異常を発見して治療につながったことがありました。その経験が、今もやりがいと使命感を与えてくれています。

 

 

それは、1年目の8月頃、入職して5ヵ月目のことです。血液検査は、まず機械で数値を測定するのですが、異常な数値が出たときには技師が顕微鏡で観察します。ちょうど8月頃から、顕微鏡の標本を見始めたのですが、その中に「異常じゃないかな?」と思う細胞がありました。まだ経験が浅く、確信が持てなかったので上司に尋ねてみると、異常細胞である可能性が高いとわかり、追加検査から病気の診断につながったことがありました。患者さんのために検査が役立ったと実感でき、すごく嬉しかったです。今は業務にも慣れ、分からないことを聞くときも、緊張し過ぎることもなくなりました。これからも、たくさんの知識を得るため、勉強に励みたいと思っています。

 

 

入職後、どのような新人教育を受けたのですか?

ISOに準じた教育体制が組まれていて、計画的なプログラムがあります。期限が決められた項目がズラッとあり、それを順番にクリアしながら技術を身につけます。例えば、正常な血液の標本を100枚見続けるという基礎固めのためのトレーニングがありました。正常なものを知ると、異常に気づけるからです。それぞれの項目はマニュアル化されていて、統一されています。各段階で、上司の評価があり、1つひとつクリアしていくと自信につながります。

 

 

ISOの認定取得で、人材育成にもスピード感が出てきているのでしょうか?

早く即戦力になれれば、技師としての貢献度が上がるので、教育プログラムが作成されていたのは、ありがたかったです。各項目には期日があるので、上司は私を合格させるために、業務シフトや研修計画を練らなければならないので大変そうでしたが…。

 

検査部は朝が早く、毎日忙しいと思いますが、ストレスはどう発散していますか?

朝が早いのは、すぐに慣れて気にならなくなりました。早出の日は、その分早く帰宅できるので、時間を有効活用できるようになりました。でも、リフレッシュは忘れないようにしています。病院の硬式テニス部に入っていて、週に1回はテニスの練習に行っています。近くに、当医療センター所有の職員専用テニスコートが2面あり、ナイター設備もあるので、勤務の終わりにテニスを楽しんでいます。体を動かすと、気分転換になります。他職種のテニス仲間とも、いろいろな話ができるので楽しいです。今は、新型コロナウイルス感染症の影響で大会は開催されていないのですが、各地の赤十字病院が集結する全国大会にも出場してみたいです。

 

この日、もう1面のコートでは、ソフトテニス部が練習していました。フットサルコートやグラウンドなどもあります。

 

最後に、これから入職を希望される人にメッセージを・・・

検査センターや企業と比べて、病院なら多職種からなるチーム医療に関わることができます。自分が勉強してきたことや身につけた技術が生かされていることを、日々、実感できます。患者さんにお会いしたり、医師の診断に大きく関与していることを知ると、やりがいも強くなると思います。

 

病院が大きければ検査項目も多種多様で、用いる検査機器も幅広くなります。それが自分自身のスキルアップにつながるので、成長していきたい人は、規模の大きな病院を選んだ方が合っていると思います。

 

就職前の見学は、病院の雰囲気を感じる絶好の機会です。ぜひ申し込んで、自分の目で確かめて、現場の話を聞いてから、応募することをおすすめします。

 

 

熊野 なつ (くまの なつ)

2021年就職、臨床検査技師。

カフェオレが大好きで、最近はカフェ巡りにハマっています。市外のカフェにも、ドライブを楽しみながら出かけています。美味しいケーキやランチを見つけると、嬉しいですね。

 

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

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