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病院では医師、看護師、助産師、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、診療放射線技師、臨床工学技士などいろいろな専門職が集まり、日々の治療を支えています。患者さんの身体も心もケアできるようにと、日々努めている仲間たちを紹介します。
2021/07/26
2017年に妻の故郷である和歌山県に移住し、京都大学の教員から日赤和歌山医療センターへ転職した石原佳知さん。その転職のきっかけは、当医療センターに日本赤十字社初の医学物理課が立ち上がったことでした。医学物理課の専従職員として和歌山にやってきて、現在は高精度放射線治療への取り組みのほか、研究にも力を注いでいます。
「理解のある上司、仲間とともに働けていることがうれしい」とほほ笑む石原さん。日々の仕事内容や、日赤和歌山医療センターの放射線治療の現状について話してくれました。
日赤和歌山医療センター内での医学物理士の役割について教えてください。
放射線によるがん治療計画を立てたり、医師が立てた計画の最適化や検証を行っています。医学物理士は医師や看護師、診療放射線技師などと違い、患者さんに直接お会いすることはほとんどありません。
当医療センターは高度な知識と技術、そして人材が必要な「高精度放射線治療」を行っている県内でも数少ない病院ですが、その高度な放射線治療は、複雑な治療計画や治療装置の品質管理の上に成り立っています。どんどん医療機器も複雑になってきており、実はコンピュータを扱う知識や技術が必要になってきています。私たちはその面から医師をサポートするのが最大の役割です。
放射線は目に見えず、しかも放射線の治療は1つの部位につき1回しか行うことができません。そのため、放射線がきちんと病変に当たっているか、その線量は適正か確認することが非常に大切なのです。「縁の下の力持ち」と表現されることもあるのですが、きちんとした治療計画と品質管理を行い、放射線による治療を患者さんに安心して受けていただくために、医師とともに責務を全うしています。
毎日どのようなスケジュールで仕事をされていますか?
午前中は、治療計画をすることが多いです。具体的には、医師が作成した治療計画をもとに、どのように放射線を照射すれば最も効率よく腫瘍に放射線を集中させ、正常組織へのダメージを抑制できるかをシミュレーションします。午後は、放射線治療機器の品質管理、放射線測定やその解析を行います。
最新技術の研究も仕事に含まれます。現在は、放射線治療に必要な線量計算のソフトウェア開発を行っています。当医療センター着任後も研究を続け、国際学会で受賞できたのは大きな励みとなりました。最近新設された治療専門医学物理士にも全国第1号として認定されました。臨床現場での活躍がより一層求められていると感じています。その他には、所属学会でいくつかの委員を拝命していて、それらの業務である医学物理士の認定審査や試験問題、教育プログラムを作成する活動もしています。
また、院内のIT推進と研究推進に関する活動にも参画しているので、院内の就労や業務環境の改善に少しでも貢献できればと模索しています。
勤務は、午前9時から午後5時30分までの日勤のみで、当直はありません。品質管理業務の1つである放射線測定を日勤後に行うこともありますが、土日祝は休日と、とても恵まれた環境だと思います。コロナ前は、土日に参加する院外の会議や学会も多数あったのですが、現在はその大半がオンラインで開催されており、家で過ごすことが増えました。休日は家族と過ごすことが多く、和歌山の景色のよい観光地をドライブするのが楽しみです。
前職の京都大学ではどのような仕事を?
放射線治療に関わりながら、大学の教員として医学物理士を育成し、そしてソフトウェア開発に関する研究を行っていました。
前職でも複雑な高精度放射線治療を行っていたのですが、2011年ごろに当医療センターがその治療を立ち上げるのでサポートしてほしいと声がかかり、転職前から週に1度、こちらに通ってきていました。
医学物理士がいる病院は、少ないのですか?
和歌山県内では当医療センターだけです。
ここには私のほかに3名、合計4名の医学物理士がいます。5年ほど前までは、医学物理士がいるのは大学病院や国立のがんセンター病院などが中心でしたが、近年は高度な放射線治療ができる機器も増え、もっと高度な治療を提供したいという病院も増えてきています。県内の放射線治療の品質管理のため、他病院に出向き、技術支援も行っています。
当医療センターでは、私が赴任してから、既に働いていた診療放射線技師さんたちが試験に挑戦して資格取得することが進みました。今後も、育成やスキルアップに力を入れたり、医学物理士を知ってもらう広報に頑張りたいと思っています。
新しい職域ですが、他職種との連携や働きやすさはいかがですか?
皆さんとても理解があり、コミュニケーションが取りやすく、居心地がよいです。私の机は、診療放射線技師さんが患者さんに放射線を照射する機器を操作する部屋にあり、モニターを通して患者さんの様子も肌で感じられるので、良い環境だと思います。
治療計画はデータによるシミュレーションであるため、日々の照射時には患者さんの体型変化等により治療計画と乖離することがあります。当医療センターでは、そのような場合、照射を担当する診療放射線技師や日々の体調を確認する看護師、医師から連絡が入ります。治療計画を変更することはスタッフにとっては大変です。しかし、たとえその変更が当日だったとしても、フレキシブルに対応するという技術、そして、より良い方法があるのならば変更するのは当然という姿勢を、スタッフ全員が共有していることにとても心強く感じています。
医学物理課のミッションは?
地域の総合病院ですので、目指しているのは「トータル医療」です。放射線によるがん治療だけを視野に入れるのではなく、一人ひとりの患者さんに合わせた治療計画を立てることです。例えば、複数箇所にがんがあったり、糖尿病を持たれていたりと、それぞれに体の状況が違います。総合病院では、診療科の連携もしやすく、密に情報も入ってきますので、これから治療する部分だけを見るのではなく、患者さんファーストで質の高い治療が提供できるようにしています。
今後の目標を教えてください。
高精度放射線治療の件数をさらに増やしていきたいです。当医療センターでは、医学物理課を立ち上げてから現在までの数年間で高精度放射線治療件数は約3倍になりましたが、和歌山だけの話ではなく、全国90以上ある赤十字病院のグループ全体や県内の高精度放射線治療件数も増えていけばと考えています。放射線治療機器はかなり多くの病院で導入が進んでいるので、医学物理士が支えることでより高度な治療ができるようになります。
もちろん、私が一人で治療をしているわけではありませんので、放射線治療部門、病院内でしっかり連携して、より良いチーム医療を行う一助となればと考えています。ここ最近では、日本放射線腫瘍学会の施設認定において「A」評価、全国のがん診療拠点病院に対して実施された「放射線治療部門における品質保証および医療安全のQuality Indicator」において全国2位となる成績を収めたことは医学物理課ではなく、放射線治療科部全体がチームとして外部から評価された結果であり、非常にうれしく思います。
当医療センターは、全国でも数少ない「地域がん診療拠点病院(高度型)」であり、2021年1月にはがんセンターも開設しました。この体制にふさわしい高度な放射線治療を安全に提供し、チームの発展にもつなげられるよう、今後とも業務に邁進してきたいです。
石原 佳知(いしはら よしとも)
2017年就職。医学博士。医学物理士。治療専門医学物理士。
趣味は、食べ歩き、出張先での散歩。
「和歌山で働く 日赤で働く」では、様々な職種のスタッフの働きぶりを紹介しています。
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