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病院では医師、看護師、助産師、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、診療放射線技師、臨床工学技士などいろいろな専門職が集まり、日々の治療を支えています。患者さんの身体も心もケアできるようにと、日々努めている仲間たちを紹介します。
2019/12/25
日赤和歌山医療センターのリハビリテーション科には、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が所属しています。医師の指示のもと、多職種が関わり患者さんの生活の質の向上や、社会復帰に向けた援助を行っています。
急性期病院のリハビリテーション(以下、リハビリ)は、がんや心臓、脳血管、呼吸器など、さまざまな疾患の患者さんの状態に応じて行います。今回は吉冨俊行技師長に、仕事内容ややりがい、そして職員の技術向上への支援体制について伺いました。
まず、リハビリテーション科の体制について教えて下さい
理学療法士(以下、PT)が16人、作業療法士(以下、OT)が5人、言語聴覚士(以下、ST)が5人所属しています。女性はPT16人のうち4人、OT5人のうち3人、ST5人のうち4人です。職員の数は毎年少しずつ増えて、これからも増員予定です。リハビリというと男性のイメージを持たれている人も多いようですが、女性も年々増えてきています。産休や育休の取得、時短勤務の選択など、家庭生活と両立するための制度も多くの職員が活用し、仕事と家庭を両立させています。
和歌山県出身者が多いですが、愛知県、三重県、広島県など他県出身もいます。県内にPTの資格を取得できる養成校も1校だけで、OTやSTの資格は取れません。そのため、ほとんどの職員が関西圏の大学や専門学校を出てから入職しています。
どのようなスケジュールで業務をされていますか?
朝9時にリハビリが始まって、マンツーマンで11人〜13人の患者さんに対応します。喜んだり励ましたりしながら、機能の回復や行動範囲を広げられるように支援します。
リハビリテーション室はもちろんありますが、病状や術後など状態によってリハビリ室まで来られない患者さんも多いため、私たちが病棟へ出向いて行うことが大半です。今は手術が終わると翌日から毎日リハビリが始まりますので、土曜・日曜の週末も働いています。
リハビリ以外の時間には、デスクワークをします。医師や看護師など他の職種に患者さんの状態を共有するため、電子カルテを毎日書き込みます。転院する患者さんも多いので、リハビリの進捗などを知らせる転院書類を書くことも日常的にあります。患者さん対応と、書類対応。この2つの業務が主な業務です。
また、個々の患者さんに合ったリハビリを提供できるように、医師や看護師など多職種とカンファレンスを行ったり、新しいリハビリを取り入れるために会議することも多いです。
急性期病院のリハビリはどのような治療を行うのでしょうか? 術前に行うリハビリもあると聞きました。
リハビリは大きく分けて3つの時期に分けられます。
当センターで行なっている急性期、そして疾患が落ち着いていて積極的にリハビリを行う回復期、機能の維持を目的とする慢性期です。
急性期のリハビリは「患者さんをリハビリの線路に乗せる」ことを目指します。
手術をされた直後のリハビリが始まる頃、患者さんは「痛い」「しんどい」「寝ていたい」状態です。私たちが病室まで出向き、「がんばりましょう」とお声がけして、リハビリへ気持ちを向けています。そして、その次に少しずつでいいからと体を動かし始めてもらいます。気持ちも体も「離床すること」を第一歩として目指します。
リハビリが始まる時期ですが、今は手術の翌日からほとんどの患者さんがリハビリを行います。もちろんリハビリを進めるためには、バイタルサイン(脈拍あるいは心拍数、呼吸(数)、血圧、体温など体調をはかる基本情報)が落ち着いてなければならないですし、痛みもないほうがいいです。
つまり、医師の治療で体の状態が良くなっているからこそ、体の機能回復のためのリハビリができるんですね。寝ていると筋肉はどんどん落ちていってしまうので、可能な範囲で、動かせるところは動かして筋力を落とさないようにすることが大切なんです。
手術で病気は良くなったけれど、動けなくなったということでは「何のための手術だったのか」となりますよね。そうならないために、手術翌日からリハビリを行うのです。
また、安静を続けすぎると、二次的合併症といって、認知症がひどくなったり床ずれができたり、肺炎になったりするので、その予防のためでもあります。
いきなり立てなくても、まずベッドに起き上がって背もたれに体を預ける、背もたれをなくして座る、ベッドから足をおろす、などできることから1つずつでいいんです。私たちが横にいなくても、患者さんは入院生活すべてがリハビリです。「リハビリして元気になりたい、回復したい」という意欲を持ち、さらに「自分は動ける、できる」と自信を持ってもらえるように、私たちは寄り添い、リハビリしていきます。
術前に行うリハビリは、術後に受けるダメージを少なくするためのものです。がんなどの病気が分かって手術が適応となっても、患者さんに手術できるだけの体力がなければ行えません。
手術をすると、どうしても筋力が落ちることが予想されるので、その前にリハビリを行い、体力を高めておくのです。術後に落ちる筋力をできるだけ減らし、日常生活にスムーズに戻れるようにします。もともと筋力の弱い人もいますからね、そういった方々は術後にさらに動くのがつらくなりますから、術前のリハビリは非常に大切といえます。
急性期病院の患者さんはかなり状態に気を配りながらのリハビリですから大変そうですね。
他職種との連携や疾患に対する知識の習得は、どのようにされているのですか?
確かに、私たちは非常に多くの症例に関わっています。さらにその患者さんたちは治療によって日々状態が変わっていきますので、それに合わせてリハビリするので、同じリハビリを繰り返すということがなく、大変といえば大変かもしれません。
昨日より今日、今日より明日と状態が変わっていきますし、患者さんの年齢層も幅広く、高齢者から子どもまでいますからね。
でも、リハビリ内容も一人で考えているのではなく、チーム医療の一員として参画しているので、医師や各職種とのコミュニケーションから、どこに気をつけて何を目標とすべきかわかります。
患者さんごとに「今日は、これができるように」「ここまでできたから、明日はここまで」と段階を追って決めていきます。日々の状態は電子カルテが共有されているので、病棟での様子は看護記録を読んで把握します。リハビリ前にバイタルサインの確認するなど、安全で適切なリハビリが行えるよう様々な気配り、目配りをします。
疾患に対する理解については、積極的に研修を受けています。
当センターにはがん患者さんが多いので、「がんのリハビリテーション研修」を受けているSTやOTが多いです。今はリハビリテーション科の2/3が修了した段階ですが、今後は全職員がこの研修を受けるようにしていきます。
そのほかにも、専門性を高めるため認定資格を取得するなど、職員それぞれがスキルアップに努めています。もちろん、職員ごとにやりたいことは違いますから、研修や学会へ出かけるのは個人の意思を尊重しています。やりたい勉強ができるよう、職場の環境を整えて応援しています。
向き不向きもありますからね。私から、その人の資質を見て「これを取ってみたらどう?」と声を掛けることもありますが、強制はしないですね。やろうと思うタイミングを待ちます。待っているだけでなく、その人が目指したいことや資格を一緒に探したりもします。
キャリアアップもできて、すごくやりがいのある職場だと感じます。
そうですね。そうやって技術が向上したり知識が増えたりするのは、急性期病院でリハビリに関わることの醍醐味の1つだと思います。一歩一歩患者さんが良くなっていくのを肌で感じられ、毎日が変化に富んでいる。それは急性期のリハビリならではですよね。
でも、仕事や勉強だけでなく、プライベートも楽しそうにやっていますよ。院内のクラブ活動に参加している職員も多いですし、それ以外にサーフィンやジョギングなど、趣味もいろいろと持っていますね。
この仕事は体力勝負ですし、休む時間がとても大事だと思っています。職員はオン・オフの切り替えが上手く、仕事に集中できる環境を自分でバランスを取ってつくっていると思います。休みは交代制でしっかり取れるので、旅行に行く職員も多いですね。その土地のお土産を買ってきてくれるので、それを食べながら話をして、楽しくやっています。
PT、ST、OTの資格を持つ、また資格取得就学中で急性期病院で働きたいと思っている方々にメッセージをお願いします。
急性期病院は多くの症例をみることができ、たくさんの患者さんに触れ合えます。スキルアップだけでなく当センターのリハビリテーション科は風通しもよく、空気も朗らかです。自分自身を向上させながら、楽しく働ける職場だと思います。
私は入職してくれた皆さんには、ジェネラリストになってもらいたいと思っています。一通りできるようになってから、自分のやりたい分野の専門性を高めていってもらう。それができるよう応援していきます。やりたいことはどんどんやってもらいたいので、その意欲のある方はぜひ一緒に働きましょう!
吉冨 俊行(よしとみ としゆき)
1991年4月入職。リハビリテーション科部技師長。理学療法士。
資格:地域ケア会議推進リーダー、介護予防推進リーダー、森林セラピーガイド、がんのリハビリテーション研修修了。
趣味:料理(パンやローストビーフのようなパーティメニューから家庭料理まで全般)
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