病院では医師、看護師、助産師、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、診療放射線技師、臨床工学技士などいろいろな専門職が集まり、日々の治療を支えています。患者さんの身体も心もケアできるようにと、日々努めている仲間たちを紹介します。

看護師インタビュー〜大学院進学でより高度な学びを〜

2021/11/24

長年のICU勤務を経て、現在は、全ての病室が個室で、応接コーナーや和室、ミニキッチンまで備える特別室もある病棟で看護係長を勤める山本麻友さん。

 

和歌山赤十字看護専門学校を卒業後、1996年に日赤和歌山医療センターへ入職。認定看護管理者教育課程のファーストレベル認定を経て、今は働きながら東京医療保健大学大学院・和歌山看護学研究科へ進み、より高度な知識を得るため学びを深めています。

 

 

二人の子どもを育てながら、仕事、家庭、プライベート、勉強と充実した日々を送る山本さんに、その原動力や時間の使い方について、話を聞きました。

 

 

家庭を持ちつつ勤務を継続されています。まず、ご家族のことを教えてください。

 

子どもは2人で、上が高校生、下の子は小学校高学年です。1人目を産んだとき、育児短時間勤務制度を利用して自分だけで育児するというイメージが沸きませんでした。夫と父母を交えて話し合った結果、実家の近くに引っ越し、保育園も家から近所のところへ。父母のサポートしてもらいながら、夜勤もあるフルタイム勤務で復帰することを選びました。子どもたちの習い事も自分で通える近所で選ぶなど、日常生活を無理せず送れるよう工夫して交替勤務を続けています。

 

「こうしなければならない」と思い込んで行動すると辛くなった経験から、「無理なものは無理」「できないことはできない」と、ある程度割り切ってきました。例えば、子どもが幼少のころ、日勤でも終業時間に帰れない日もありました。患者さんや病棟の状況によっては、家に帰るのが遅くなります。そうすると、子どもたちの食事も就寝も遅くなります。また、夜勤の日は、朝、起きたら母親がおらず、父親が世話をすることも子どもたちには当たり前です。子どもたちはそういう日常しか知りません。それがうちの普通でした。そういう環境の中でできることをやっていこうという気持ちで生活してきました。

 

 

もちろん、家事も手早くできたほうがよいので、家庭でも仕事と同じように「やることリスト」をつくったり、家事をルーティーンと見なしてルール化したり、買い物ルートを事前に考えて無駄な時間を減らしたりとコツコツ努力しています。

 

 

家事も仕事と同じように取り組まれているのですね。

 

行きあたりばったりより、毎日決めたことを同じようなリズムで続けるほうが抜けもないですし、気持ちや時間に余裕ができます。特に「やることリスト」は効果があり、これまでになかった時間が生まれるようになりました。もしかしたら、これまで忙しいと思い込んでいて、必要以上に焦りながら生活していたのかもしれないな、と思いましたね。身の回りの整理を進めるうちに、自分の考えも整理するようになりました。

 

 

 

時間が生まれ、大学院進学が実現したのでしょうか?

 

そうですね。進学に踏み切れたのは、子どもたちが成長して自分自身でできることが増えたり、夫が転職して家事のサポートが増えたりと複合的な理由もあるのですが、時間的な余裕が生まれたことによって、進学する決意を固めることができました。やはり時間がなければ授業を受けられませんし、授業以外にも調べ物をしたり、レポートを書いたり、修士論文を準備する時間などが必要ですから。入学後は、学業と家事の両方で to do リストを作成する習慣ができたことで、優先順位が明確になり、両立につながったと思います。この手法は、仕事の段取りを組むことにも生かせています。

 

勉強することの楽しさに気づいたのは、大学院へ進む前です。認定看護管理者教育課程のファーストレベル認定のために受けた院外研修がきっかけでした。研修から戻ったら、これまでと同じ職場なのに、全く違うものに見えたんです。学びによって視野が広がり、視点が変わったからだと気づきました。勉強を続けたいと思いつつも余裕がなかったり、何をしたいのか迷っていました。当時の病棟師長から「大学院進学説明会があるから行ってみない?」と勧められて出席したのが、ことの始まりです。

 

 

私は看護専門学校卒業ですが、実務の年数や経験が認められて入学資格がありました。当医療センターに隣接する東京医療保健大学・日赤和歌山医療センターキャンパスで説明会に出席したときは、両立への不安から「働いていますが大丈夫ですか?」と質問しました。柔軟に対応してくださるとの説明や、「やれるよ!」と声をかけていただいたことで心を決め、大学院1期生として入学しました。12人の同期のうち、6人が日赤和歌山医療センターの看護師です。職場では、授業に合わせてシフトを組んでもらっていて、病棟スタッフの協力のおかげで勉強を続けられています。

 

 

大学院ではどんなことを学んでいるのですか?

 

1年目は、授業が週3回、18時21時過ぎまであって結構たいへんでしたが、2年目からは研究が中心となり、時間配分もしやすくなりました。共通科目や専門科目で基礎的な知識を学びながら、一人ひとりがテーマを決めて特別研究に取り組みます。私は、入学の時点でテーマをしっかり絞り込めていませんでしたが、授業を受けながら課題を見つけました。看護師がカルテの情報を活用したり、看護記録の効率的な入力に関わることを研究しています。

 

 

医療分野も情報化が進み、病院には電子カルテが導入され、私たちも使っています。若い看護師は、高校生のころから情報分野の授業があったり、看護大学でも基礎的な情報リテラシーを勉強していますが、ベテランの看護師はパソコンなどの操作に慣れていない人も多く、仕組みまで理解している人は多くありません。病院で研修もありますが、電子カルテの運用は職種に任されている部分も多く、その情報の取り扱い方や適切な運用・管理についてまだまだ課題があります。教育・研修の機会があっても、それを院内全体で活用できているのか、個人の理解まで落とし込んでいるのか、課題の多い分野だと思います。

 

作業を効率化させたり、ケアのレベルを上げたりするには、情報化の促進は必須です。もともと教育にも興味があったので、看護師がよりよいケアをしやすいように、情報化の側面から課題解決をしていけたらいいなと思っています。

 

 

実際の病棟では、ケアと情報をどのように活用していますか?

 

患者さんにとって入院は、家や他施設など住み慣れた環境の変化も大きいです。ですから、入院されたときから、退院後の生活を想像してケアを提供します。患者さん自身・ご家族が退院した後、手術してリハビリなどが必要になった状況で、どんな風に療養と生活を両立させられるか、考えることは尽きません。

 

 

しかも、若手の看護師が、生活スタイルの異なる高齢患者さんの生活を想像するのは、なおさら容易ではありません。どんな家に住んでいるのか? 何時に起床するのか? 安眠できているのか? 入浴の頻度は? 食事の好みは? 手助けしてくれる家族や知人は? 介護サービスは受けているのか? リサーチすることは沢山あります。交替制の勤務ということもあり、受け持ち看護師がひとりで全部を聞き取ることは困難です。一人の患者さんに関わる多くのスタッフが収集した情報を電子カルテに集約し活用できるようになることは、より良いケアに必要不可欠なものとなっています。

 

情報が多いと、想像しやすくなりますし、想像できると共感できるようになり、その患者さんの目線で考えられるようになります。伝え方が変わると、患者さんも一緒に取り組んでくれるようになります。電子カルテを使って、情報の蓄積と活用方法、両方を使いやすくしていきたいと考えています。

 

 

今後、目指しているものは?

 

まずは、目の前の患者さんに「どうすればもっと良いケアができるか」を実践していきたいですね。これまで、患者さんから多くのことを学ばせていただきました。皆さん、病気と戦いながら日々一生懸命過ごされていて、私たちも、もっと頑張れるんじゃないかと思います。力をもらっていますね。

 

 

修士論文の作成を通じ、自分なりに勉強や経験を積んだことを生かして、看護師が自信をもって働けるよう、良いケアができることにつながれば…と思い描いています。

 

 

山本 麻友(やまもと まゆ)

1996年4月入職。看護係長。看護管理者教育課程ファーストレベル認定。

趣味はヨガ。週に1〜2回通って、頭の中をスッキリさせリフレッシュします。

 

 

 

「和歌山で働く 日赤で働く」では、様々な職種のスタッフの働きぶりを紹介しています。

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