海外の紛争・災害などに対して、医師や看護師などの職員を派遣し、国境や宗教、人種を超えて人の命と健康、尊厳を守る活動に取り組んでいます。

国際赤十字赤新月社連盟中東北アフリカ地域事務所での活動

2023/09/16

国際赤十字の1つとして、国際赤十字赤新月社連盟(以下、IFRC)という組織があります。IFRCは、世界に191社ある赤十字・赤新月社の連合体で、本部をスイスジュネーブ、5つの地域事務所と50以上の代表部を世界各地に置き活動しています。主な役割は、自然災害時や平時の人道支援におけるコーディネーションなどです。

 

HDCCの同僚と(筆者:中央下の赤い上着)

 

私は、今回、2022年10月17日~2023年3月29日まで、中東・北アフリカ地域事務所(MENA)で、緊急保健要員として活動してきました。

 

MENAは、レバノンの首都ベイルートに事務所を構えており、そこから17ヵ国(モロッコ、アルジェリア、リビア、チュニジア、エジプト、パレスチナ、イエメン、サウジアラビア、UAE、レバノン、ヨルダン、シリア、カタール、クエート、バーレーン、イラン、イラク)を管轄し、対象各国赤十字・赤新月社(以下、NS)の日々の活動をサポートしています。

 

 

所属した部署はHDCCといって、保健・災害・気候変動に関する仕事をする部門です。11ヵ国から集まった21名が勤務しており、国際色豊かで多様性に富んだチームです。誰もが赤十字の7原則を基本に物事を考え、相手の文化や価値観を尊重しながら、それぞれの専門性を発揮しています。

 

期間中の主な活動は、NSへの緊急保健分野におけるテクニカルサポートです。NSが提供する人道支援サービスの質を確保するため、現在NSで進行している活動や今後の活動に対して、保健・水衛生分野でのアドバイスやサポートを行いました。

 

トレーニング風景(筆者:右から2人目)

 

また、これからアウトブレイクの可能性がありそうな感染症の動向をチェックして、その情報発信もします。中東では、もはや完全に関心が薄れていたCOVID-19でしたが、新しい株が他の地域で発見されると、その動向を追いながら最新情報と基本的な予防の大切さなどを管轄下の各国に注意喚起していきます。

 

MENA地域は、未だ内紛や経済危機など人道危機が常にあって情勢が不安定な国も多いので、国レベルでの保健衛生情報が開示されていない場合も多く、保健衛生情報1つ集めるのもとても大変でした。

 

ワークショップの様子(筆者:右端)

 

また、自分が作成した資料が17カ国に配布されるというプレッシャーにも押しつぶされそうになった時もありました。活動を通し、NSから良好なフィードバックを貰えたとき、心の底から安堵し、同時に嬉しさがこみ上げてきた経験は忘れられません。 

 

任期中にはトルコ・シリアの地震も発生し、その対応と調整にも追われ多忙でしたが、日本赤十字社も行っている緊急医療救援チームがどのような調整のもとで被災地への発動に至っているのか、非常によくわかりました。

 

初めてのIFRC地域事務所での仕事は、当初はとても不安がありましたが、刺激的で学びも多かったです。

 

IFRCの仕事は、客観的にみると、緊急医療救援のように格好良くはないかもしれません。完全なる裏方の仕事です。PCに向かって一日中書類を作成したり、オンライン会議などをして各方面との調整にまい進します。緊急の案件があると休日返上で仕事をするのも珍しくありません。

 

そんな中でも、私は派遣中、自分の仕事にとてもやりがいを感じていました。理由は、コーディネーションなくして、より良い支援は届けられないと感じたからです。赤十字の素晴らしい活動を“支援を必要とする人々”により良い形で届けるために、今後も自己研鑽を重ねていきたいと思っています。

 

 

日本赤十字社和歌山医療センター 国際医療救援部

 

「和歌山から世界へ」では、様々な国際活動をレポートしていきます。出発式のほかにも、現地での活動、帰国報告会、国際人道法や語学・熱帯医学などの研修風景などをお届けします。乞うご期待!

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