海外の紛争・災害などに対して、医師や看護師などの職員を派遣し、国境や宗教、人種を超えて人の命と健康、尊厳を守る活動に取り組んでいます。

災害時における公衆衛生への対策

2023/11/18

日本赤十字社は、様々な国際救援活動を行っていますが、その代表的な1つに緊急医療支援があります。

 

一方で、大規模災害などの緊急時は、医療だけでなく、人々の健康を脅かす問題として、常に対策を講じなければいけないことの1つに「公衆衛生」があります。

 

例えば、災害後などは、衛生環境が悪化し、飲料水などが汚染されることによって、被災地でコレラなどの感染症が大規模に流行することがあります。

このような問題に対応するため、ドイツ赤十字社と国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)の共同開催による「緊急時における公衆衛生Bレベル研修」に参加してきたので、ご紹介します

 

研修会場 兼 宿舎(ドイツ・ベルリン)

 

この研修は、「緊急時における各国赤十字・赤新月社の公衆衛生対応の能力開発・強化、災害発生時に緊急派遣できる公衆衛生要員育成の一環」として、公衆衛生の専門研修に位置づけられています。

 

研修は、緊急時の公衆衛生の専門知識の習得と応用に焦点を当てており、講義、セッション、グループ演習、ロールプレイ、ケーススタディを含む問題解決型学習方法で行われました。エボラやコレラなど、実際のアウトブレイク事例を用いた内容で、リアリティがあり、学びが多くありました。

 

参加者は、既に複数回の緊急支援派遣経験のある方ばかりで、各自の経験に基づいた意見はどれも興味深いものでした。特に、印象に残っているのは、アフリカからの参加者による現在進行形のプロジェクトに関連した経験共有です。

 

筆者(後列 右から2人目)

 

アフリカでは、現在、コレラが猛威を振るっており、そのコレラ対応を実際に指揮しているマラウィ赤十字社の担当者も参加していました。マラウィ赤十字社では、EPIC(Epidemic preparedness and response in community)という、連盟が開発した感染症の準備と対応に特化したトレーニング手法を活用して、対応にあたっているという話を聞きました。

 

 

また、講義の進め方も勉強になりました。講師からの一方通行ではなく、参加者に常に問題を考えさせ、ディスカッションや対話を交えながら進められ、たとえ自分と考えが異なっても、「まずは、相手の意見や考えを尊重し、理解しようとすること」が基本となっていました。

 

このアプローチは、他者理解に繋がり、自分とは異なった考え方や視点を尊重し学ぶ絶好の機会になりました。このような考え方は、国際救援活動の現場だけではなく、多様性が求められる昨今のどんな現場でも、とても大切な視点だと強く感じました。

 

 

日本赤十字社和歌山医療センター 国際医療救援部

 

「和歌山から世界へ」では、様々な国際活動をレポートしていきます。出発式のほかにも、現地での活動、帰国報告会、国際人道法や語学・熱帯医学などの研修風景などをお届けします。乞うご期待!

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