海外の紛争・災害などに対して、医師や看護師などの職員を派遣し、国境や宗教、人種を超えて人の命と健康、尊厳を守る活動に取り組んでいます。

レバノンでの医療支援レポート

2023/07/15

2023年1月10日から3月31日にかけて、救急科・集中治療部の医師が、レバノンでの医療支援事業に派遣され、活動してきましたのでレポートします

 

病院スタッフと(真ん中から少し右手、赤新月マークの下に青い服を着て立つ筆者)

 

レバノンには、パレスチナ難民が住む難民キャンプが12ヵ所あり、故郷を失った人々が75年もの間、生活を続けています。

 

パレスチナ赤新月社(赤新月社はイスラム圏の赤十字社に使用される)は、難民キャンプ内に5つの病院を設置し、おもにパレスチナ人に対して低額あるいは無料で医療を提供しています。

 

日本赤十字社(以下、日赤)は2018年から、パレスチナ赤新月社と協力して、その5病院の支援事業を展開してきました。新型コロナウイルス感染症流行による中断ののち、2022年4月に第二期を再開してからは、レバノン北部のサファド病院で、病院スタッフへの技術支援や提言、研修など、さまざまな取り組みを行っています。私は、主に病院での多数傷病者対応訓練に関連する活動を行いました。

 

訓練日当日、打ち合わせの様子

 

日本国内における災害医療対応をベースに、現地特有の事情(紛争や暴力行為をはじめとする人為的災害など)を加味して訓練シナリオを作っていくことになりましたが、病院スタッフには既に同様の訓練経験がある人もいたことから、机上訓練のみならず実地訓練も含めた幅広い計画を立てました。

 

最終的な訓練実施に向けて、講義や小訓練を繰り返す中で、災害医療の原則(CSCATTT:指揮と連携、安全確保、情報収集伝達、評価、トリアージ、治療、搬送)を理解してもらうこと、中でも負傷者トリアージ方法の実践が必要だとわかり、それらに重点を置きました。

 

トリアージ研修

 

このような訓練を実施するには、通常、日本国内では半年から1年程度の準備期間を要しますが、要員の派遣スケジュールの都合もあり、今回はわずか3ヵ月弱で準備する必要がありました。

 

時間を有効に活用するために事前学習も取り入れ、そのための動画資料を多く作成しました。事前学習には、訓練に直接関連する項目だけでなく、その前提である外傷診療や心のケアの内容も盛り込み、講義前後に理解度チェックなども交えながら、効率的に学べるよう工夫しました。

 

訓練シナリオの打ち合わせ

 

準備途中でトルコ・シリア地震が発生したため、こころのケアをはじめとした実災害対応に日赤および現地スタッフの人的時間的資源がかなり割かれたりもしましたが、なんとか並行して残った講義や訓練を進められたので、結果的に予定通り実地訓練を開催できました。

 

訓練当日の様子

 

訓練当日の様子

 

同様の訓練を継続していくことで、不測の事態でも、赤十字運動の本質である『取り残さない医療』の実現に少しでも近づいていけるよう、今後も様々な形で支援を続けたいと思います。

 

 

日本赤十字社和歌山医療センター 国際医療救援部

 

「和歌山から世界へ」では、様々な国際活動をレポートしていきます。出発式のほかにも、現地での活動、帰国報告会、国際人道法や語学・熱帯医学などの研修風景などをお届けします。乞うご期待!

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