海外の紛争・災害などに対して、医師や看護師などの職員を派遣し、国境や宗教、人種を超えて人の命と健康、尊厳を守る活動に取り組んでいます。

赤十字・赤新月社のロジスティクス要員を目指して

2023/05/20

2022年5月から2023年3月末までの約10ヵ月間、マレーシアのクアラルンプールにある国際赤十字赤新月社連盟アジア大洋州地域事務所のGHS&SCM (Global Humanitarian Service & Supply Chain Management)部門で、プロキュアメント(調達)要員として活動しました。

 

 

GHS&SCM部門は、物資やサービスを調達・管理するロジスティクス部門であり、調達・輸送・倉庫管理・車両管理・サプライチェーンマネジメント、各国赤十字・赤新月社のロジスティクス基盤の強化等を行っています。

 

私の主な業務は、アジア大洋州の各国赤十字社・赤新月社や連盟各国代表部やオペレーションチームからのリクエストに基づき、必要なモノやサービスを調達し、連盟の緊急救援活動やプログラムを支えることでした。モノ・サービスを提供し活動を支えていることから、連盟のロジスティクスは「サービスプロバイダー」とも呼ばれています。

 

連盟の調達活動は、世界中のドナーからの寄付金を財源としており、また、多額の金額を扱う調達活動は汚職や不正が生じやすいため、すべてのプロセスで公平性・透明性が求められます。加えて、調達したモノ・サービスは被災者、そして最前線で活動するスタッフやボランティアが使用するため、品質がきちんと保証されているモノである必要があります。

 

 

そのため、マニュアルによって手順が細かく決められており、一定の時間を要するため、スピードが求められる災害時の緊急フェーズでは、「1秒でも早くオペレーションのニーズに応えたい」という気持ちの一方で、プロセスを順守しなければいけない、というジレンマを抱えることも少なくありませんでした。

 

派遣中には、2つの大きなオペレーションに携わる機会がありました。

1つ目は2022年のパキスタン洪水災害で、家屋の損傷が多く4,000張の家族用テントの調達を担当し、2つ目の2023年2月のトルコ・シリア地震では、連盟マレーシア倉庫に備蓄している日本赤十字社の27トン分の支援物資を寄付品として民間航空機でトルコ・イスタンブールへ送る航空輸送サービスを締結しました。

 

 

どちらも緊急支援で、特に、パキスタンのテント調達は金額も大きかったため、「失敗できない」という気持ちと、「迅速・適切に対応しなければいけない」という重圧と緊張感をもって挑みました。また、家族用テントの調達の際は、品質保証や免税申請有無など確認すべき事項が多く、当初の予定より時間を費やしてしまいましたが、チームメイトをはじめ多くの人の協力があり、なんとかやり遂げられました。

 

GHS&SCM部門の同僚と(筆者:前列右端)

 

被災者と実際に接する機会は少ない部門ですが、災害時に迅速な調達活動ができたときは達成感を感じます。チャーター機による連盟の人道支援物資輸送の積込みに立ち会った際には、「この貨物が被災者の方へ届くんだ」と思うと、胸が熱くなりました。

 

 

日本赤十字社和歌山医療センター 国際医療救援部

 

「和歌山から世界へ」では、様々な国際活動をレポートしていきます。出発式のほかにも、現地での活動、帰国報告会、国際人道法や語学・熱帯医学などの研修風景などをお届けします。乞うご期待!

 

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