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海外の紛争・災害などに対して、医師や看護師などの職員を派遣し、国境や宗教、人種を超えて人の命と健康、尊厳を守る活動に取り組んでいます。
2024/11/16
バングラデシュ・コックスバザール県の避難民キャンプでは、ミャンマーからの大規模流入以降、7年が経過した現在も100万人以上が先行きの見えない生活を余儀なくされています。
どこの国籍も持たない避難民は、移動や就業などが制限されていて、物理的にも心理的にも閉塞感が強い環境下にあるうえに、熱波やサイクロン、大雨などの自然災害にもさらされています。また、多くの避難民が帰還を望んでいるミャンマーと避難民を受入れているバングラデシュ、それぞれの国内情勢が避難民の生活に与える影響も大きく、自らの力が及ばないような困難に直面する日々は人びとの心に大きな負担となっています。
日本赤十字社(以下、日赤)は、避難民キャンプへの大規模な流入が発生した当初から医療をはじめとした支援を行っていて、その中に心理社会的支援という『こころのケア』の活動があります。
私は2023年10月から約1年間、避難民キャンプでの心理社会的支援(以下、こころのケア)活動に携わり、バングラデシュ赤新月社や国際赤十字・赤新月社連盟の職員、また、多くのボランティアと協働しました。
今回は、現地でともに活動したボランティアに焦点をあてて報告します。
(報告者:国際医療救援部 事務職員 林 優子)
世界保健機関(WHO)の憲章では、「健康とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態」と定義されています。
こころのケア活動は、避難民が健康的に生活を送るために欠かせない要素である心の健康を支え、人が持つ適応力や対処力、回復力を本来通り発揮して、困難な状況におけるストレスを自ら克服できるようにサポートすることを目的としています。
こころのケアを含めた緊急救援・支援活動は、受益者のニーズに基づき、置かれている現状や文化的背景に十分に配慮しながら進めることが肝要です。そのため、当事者でもある現地ボランティアは、数的貢献のみならず、必要な支援を適切に現場につなげるためにも欠かせない存在です。
バングラデシュの避難民キャンプで働くボランティアには、キャンプで暮らす避難民とキャンプ周辺の地域(ホストコミュニティ)で暮らすバングラデシュ人がいて、バングラデシュ赤新月社のこころのケアチームとともに日々の活動を行っています。
こころのケア活動を提供するキャンプ内のコミュニティ・セーフ・スペース(Community Safe Space:CSS)では、テーマに沿ったグループディスカッション、基礎的な英語やミャンマー語の学習、描画、服の仕立てや刺繍などの手作業、身体を動かすレクリエーションなどを提供しています。
(左もしくは上) 避難民ボランティアと手作業をする参加者 ©JRCS
(右もしくは下) 避難民ボランティアに教えてもらいながらミシンを扱う女の子 ©JRCS
参加者たちは、毎日の活動を運営し自分たちに向き合うボランティアを信頼していて、諍いなどがあって対応に困るときには、ボランティアに仲裁の助けを求めて、CSSまで呼びに来ることもあるといいます。CSSに通う一番の理由を聞くと、「ボランティアの人たちと会って話ができるから」と答えた子どももいました。
懸命にキャンプでの日々を生きながら、自身のコミュニティへの支援活動にも携わるボランティアの姿は、子どもたちがこれからの在り方を考えるうえでの良きロールモデル(模範)であり、また、地域社会を健全に形作る中心的な存在のひとつとなっています。
長引く避難生活や未来の不透明さ、避難民キャンプ内外の情勢不安などによるストレスが増大する中、こころのケアの重要性がますます高まっています。
日本赤十字社はこれからも、バングラデシュ南部避難民をはじめ、助けを必要とする人々のための活動を続けていきます。
日本赤十字社バングラデシュ南部避難民支援については、こちらをご覧ください。
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日本赤十字社和歌山医療センター 国際医療救援部
「和歌山から世界へ」では、様々な国際活動をレポートしていきます。出発式のほかにも、現地での活動、帰国報告会、国際人道法や語学・熱帯医学などの研修風景などをお届けします。乞うご期待!