がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

がんの先進医療① 先進医療とは?

2021/10/19

前回まで2回にわたり、「がんの標準治療」について取り上げました。

 

がん治療の王道は「標準治療」で、健康保険で受けられる安全で最適な治療だということをお伝えしました。

 

今回と次回では、先進医療について説明していきます。

 

「先進医療」という言葉は、テレビや書籍などで聞いたことがある方も多いでしょう。

 

その名前から受ける印象で、先進医療というからには標準治療よりも高度な医療で有効性も高い、と思われている方もいらっしゃるかもしれませんね。

 

 

しかし、新しい医療技術の開発はとても困難で、大きな期待を持って開発された技術でさえも、基本的な有効性や安全性が明確ではありません。費用も自己負担ですから患者さんは高額な負担を強いられます。

 

つまり、最新ではあるけれども、標準医療より有効性が高くてよい治療だとは言い切れません。

 

それでも医療が進歩し、選択肢が広がることは患者さんやご家族にとって有益なことです。そのため、最新技術の中でも厚生労働大臣が指定したものを者さんが受けやすいよう保険診療と併用することが認められた医療技術が「先進医療」です。

 

まずは、先進医療がどういうものなのか詳しく説明していきましょう。

 

 

厚生労働大臣から承認を受けた医療技術が「先進医療」

 

現在、保険診療が認められておらず治療費が自己負担となっているものの、今後保険診療の収載を検討するに値する医療であると厚生労働大臣から承認を受けた医療技術を「先進医療」といいます。承認の基準は、先進性があり、医学的根拠も有する医療だと評価されているかどうかです。

 

 

それぞれの先進医療ごとに、実施可能な医療機関の施設基準が定められています。その条件をクリアした医療機関でなければ、その治療を実施することができません。「この先進医療を受けたい」と思っても、ご自身が通われている医療施設で受けられない場合があるのは仕方がないことなのです。

 

承認の基準は非常に厳しいものですが、厚生労働大臣の承認によって患者負担の軽減も配慮されています。先進医療の技術的な部分の費用は全額自己負担になりますが、入院費、薬剤費、検査費など通常の医療でも発生する費用は公的な医療保険(健康保険)でカバーされます。一般保険診療と共通する部分が保険適用されることで、負担金額が抑えられます。

 

 

「先進医療」の実施数

 

今後、その医療技術が保険診療に収載されるのが適切かどうか、評価する仕組みが先進医療です。

 

つまり、今は先進治療であっても、しばらくしたら保険診療に移行し、標準治療となるものもあります。また、評価が得られなかった、あるいは保険診療に合わない治療と判断され、先進医療から削除されることもあります。

 

2021年7月現在では、保険収載される可能性が高いとされる先進医療Aに24種類の医療技術が認められています。各技術の概要については、厚生労働省のホームページで公開されています。

 

厚生労働省ホームページ「先進医療」の一覧

 

先進医療は多くの患者さんが受けられており、2020年度は5,459人の患者さんに実施されました。患者さんの数も年度によって増減がありますが、これは前述した理由によって医療技術が先進医療の対象から外れることで起こっています。

 

先進医療の対象となる技術は時とともに変化します。今どんな技術が先進医療として認可されているのか関心のある方はチェックしてみてください。

 

では、次回は実施件数が多い先進医療をご紹介し、その技術によって受けられる治療内容について説明していきます。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを歴任したがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年から現職。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

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