がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

日赤がんセンターの将来像

2022/02/15

2021年1月、外来の診療科配置を再構成し、「日赤がんセンター」を開設しました。

 

がんセンターでは、ユニットと呼ぶ多職種で構成されるチームが臓器別にがん診療にあたるのが特徴です。ユニットには診療科の枠を超えて複数領域の医師が集まるほか、看護師や薬剤師、管理栄養士をはじめとする様々な職種のエキスパートが参画し、最善の治療を提供しています。

 

これまでも、当医療センターは最新のがん治療を行ってきましたが、新たに「日赤がんセンター」として取り組みをはじめた目的は、質の高い新しい医療を継続して長く地域に提供し続けるためです。

 

 

ユニット診療は、一人の医師の決断に依存する医療と対極にあります。多くの人が集まって英知を集結したユニット診療を定着させることで、情報共有する基盤、そして、議論して選択肢を見つけ出す文化が根付きますから、メンバーが入れ替わったり、新しい医療の分野が出てきたりしたとしても、高品質で最新の医療をずっと提供できる、そう考えています。

 

 

医療における専門分化が進んでいます

現在、医療分野も専門性が求められるようになり、特に、医師は自身が選んだ1つのジャンルを追求するようになりました。例えば、手術を行う外科医、薬物療法や全身管理に長けた内科医、放射線治療を行う放射線治療医、がんを画像で見つける放射線診断医といったように、それぞれが専門分野を持ち、日々の診療にあたっています。

 

専門分化は今後も進んでいくと思われますので、一人の医師が検査結果から治療方針を決め、療養生活のケアや支援まで一貫して行うことは、どんどん困難となるでしょう。そして、医師一人が抱え込む状況では、いつしか破綻してしまい、最善の医療が提供できなくなります。

 

 

そこで、がんセンターにはチーム医療であるユニット診療を取り入れました。1つの分野に深い知識と経験がある人材が増えてくるのは心強いことですから、その人たちが連携し、情報共有や議論を行いながら信頼関係を築き切磋琢磨する場ができれば、最新の医療をこれからも変わらず患者さんに届けられます。

 

 

患者さんが集まる場所を作れた

がんセンターはその名の通り、がんに関係する医療を提供する場所です。最新のがん治療以外にも、早期発見のためのがん検診の充実、がん患者さんの社会的・経済的・精神的なサポートなど、あらゆる場面で必要な医療や支援を提供しています。

 

 

「がん」とはっきり看板を掲げたことで、患者さんにとっては「がんに関わることならここに行けばよい」というシンボルになりますから、体のことで心配が出てきたときに少しでも不安が軽減されたらいいなと思っています。また、がんセンターが機能していることで皆さんに興味関心を持っていただき、がんという病気に対する意識が高まれば、早期発見がより多くなるかもしれません。そうなれば・・・と、願っています。

 

また、多くの患者さんが集まり、がんに関係する医療を必要とする場ができたことで、がんに関係する人材、例えば、がん看護専門看護師やがん専門薬剤師など、専門的な知識を持った人材を結集させやすくなりました。専門的な知識を持った人たちも働きやすいはずです。優秀で熱心なエキスパートが集まれば、継続して品質の高い医療を提供できます。

 

 

長くなりましたが、このような将来を見据えて、日赤がんセンターを設立しました。

末永く地域の皆さまから愛され、信頼されるがんセンターになるよう、願っています。

 

次回は、いよいよ最終回になります。ご一読いただけると幸いです。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを歴任したがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

 

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