『終末期だけでない緩和ケア!」当医療センターで行っている早期からの緩和ケアについて、様々な職種の関わりをご紹介します。

新連載「緩和ケア」って?

2025/01/08

緩和ケアを知ると、入院中でも、病気を抱えながらの生活においても、痛みやつらさが和らいだ状態で過ごしていただけるはず・・・。当医療センターで行われている緩和ケアをご紹介する、こちらの連載。

第1回は、「緩和ケア」の定義と期待される効果について、ご紹介します。

 

最近、耳にすることが増えた「緩和ケア」ですが、「緩(ゆるめる)+和(やわらげる)」と書くように、疾患の苦痛を軽減させ、やわらげることを指します。

 

 

WHO(世界保健機関)は、2002年に「緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、 痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、 苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである」と提唱しています。

 

日本では、「がん対策基本法」の2016年の改正で緩和ケアが盛り込まれ、「がんその他の特定の疾病に罹患した者に係る身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安を緩和することによりその療養生活の質の維持向上を図ることを主たる目的とする治療、看護その他の行為をいう」と、診断期から緩和ケアが推進されています。

 

 

最近は、循環器疾患などでも緩和ケアを行うことが増えてきましたが、主に、がんの診療で行われています。

 

患者さんに緩和ケアのイメージについて聞いてみると「痛みを取ってくれる」、「ゆっくり話を聞いてくれる」という声がある一方、「一度入院したら、帰れないのでしょう?」、「本人に緩和ケアとは言わないでください」、「麻薬は使わないでください」といった否定的なイメージを持つ人もおられます。

 

 

昔は、がんに対する積極的な治療(手術や抗がん剤治療)をやり尽くした後に、「もうやれることがないので、緩和ケアに紹介します」と言って紹介されることが多かったため、緩和ケアと終末期治療が同じものというイメージが定着していたのだと思います。

 

現在の緩和ケアは、がんと診断されたときから、診断や治療の時期に応じてがんに対する治療との割合を変えながら行われ、常に、患者さんに寄り添い提供されるものです。

 

緩和ケアの対象は、『がんと診断されたすべての患者さんとその家族』です。

 

がんには、さまざまな苦痛が伴います。がんと診断されたことによる心のつらさ、がんそのものによる痛み、食欲不振や倦怠感、治療に伴う心のつらさ、仕事のこと、治療費、生活費などの心配などがあり、家族も生活の変化、患者さんへの接し方などで悩まれます。

 

たとえ病名が同じでも、その人の今までの生き方、仕事や家族との関係、趣味や大切にしていることによって状況はさまざまです。

 

 

当医療センターでは、それらの苦痛に対して多くの職種が協力して患者さんに寄り添い、苦痛を和らげ、その人らしく過ごせるように、最善の緩和ケアを提供できるよう努めています。

 

がん治療は、診断期→治療期→回復期もしくは終末期と進んでいきますが、診断期は、がん告知による心のつらさ、治療法を選択する際の悩みなどに対して、相談や情報提供することが主ですが、治療期になると、がんそのものの苦痛が出てきたり、手術や抗がん剤などの治療に伴うつらさが出てくるので、その緩和について提案することが増えてきます。痛みを軽減する薬を処方したり、治療の間隔を調整する提案をしたり、具体的なケアを受けることにより、治療をやり遂げる支援をしています。

 

 

ここまで読んでいただき、「終末期だけでない緩和ケア」というものが、少しイメージできてきたでしょうか?

 

次回は、当医療センターの緩和ケアの体制をご紹介します。

 

 

一宮 正人 (いちみや まさと)

緩和ケア内科部長。

日本緩和医療学会緩和医療認定医、日本外科学会外科専門医・指導医、日本消化器外科学会消化器外科専門医・指導医、日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医、日本内視鏡外科学会技術認定医(消化器・一般外科:胆道)。

好きなことは、旧車いじりとカラオケ。ミレニアム以前に流行した日本製スポーツカーをメンテして走らせたり、女性ボーカルのJ-ポップをカラオケで歌うのが好きです。

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

Share

この記事を気に入ったならシェアしよう!