がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

緩和医療② ご自宅でも、病棟でも緩和ケアを

2021/07/20

さて、引き続き緩和医療のお話です。

 

緩和ケアとも呼ばれるこの医療は、がんと診断されたときからすべてのがん患者さんとその家族が受けるべきものです。

 

緩和ケアは、患者さんの精神的な落ち込み、治療中の抗がん薬や放射線治療の副作用の予防や対処なども含め、さまざまなつらさを支える役割があります。

 

 

家族にとっても、生活が一変したり、治療費などの負担に不安を感じることもあるでしょう。緩和ケアはそのようなご家族の心理的、社会的な苦悩も支援します。

 

 

がんと診断されたらすぐに行うべき。自宅でもケアが可能

 

患者さんは、緩和ケアのために入院しなければならない、ということはありません。

 

緩和ケアは、住み慣れた自宅でも受けることができます。安心してリラックスできる自宅で、生活のペースに合わせながら病院と同じような緩和ケアを受けられるのは、患者さんにも家族にとって深い安心感があるでしょう(ただし、在宅療養を受けるには、医師の定期的な診療を受ける訪問診療に加えて、訪問看護、訪問介護などの在宅でのサービスを整える必要があります)。

 

 

自宅で療養中に具合が悪くなったときには、訪問診療医と相談して、病院に入院することもできます。安心して自宅で緩和ケアを受けるために、訪問診療医や訪問看護師と、療養の目的や希望する生活について十分に話し合いましょう。

 

緊急時の対応方法や受け入れ先の医療機関についても、あらかじめ確認しておくことが大切です。

 

 

緩和ケア病棟の特徴と、その役割

 

緩和ケア病棟とは、緩和ケアに特化した病棟です。

 

がんの治癒を目的とした治療ではなく、痛みをはじめとする、がんに伴う様々な苦痛症状を抱える患者さんのつらさを入院していただいて和らげる場所です。

 

一般病棟と異なり、できる限り日常生活に近い暮らしができるように設計されています。家族とともに過ごすスペースや共用のキッチンなどが設けられている場合もあります。

 

また、茶話会や季節のイベントなどが催されることが多く、家族などの親しい人とともにイベントを楽しむこともできます。入院での緩和ケアにより、体や心のつらさが和らいだら、退院し自宅に帰ることもできます。

 

緩和ケア病棟には、病院内にある場合と、緩和ケアのみを行う独立型の施設の場合(ホスピスや緩和ケア病院)があります。

 

厚生労働省から「緩和ケア病棟」として承認を受けた施設の場合、医療費は定額ですが、食費などの医療費以外の費用が別途かかります。

 

日本赤十字社和歌山医療センターの緩和ケア病床「ひなげし」について

 

当センターでは、「緩和ケア内科」を2018年9月に開設しました。

 

2018年10月より、南館13階に「緩和ケア病棟」を設置しています。厚生労働省から承認を受けた和歌山県唯一の緩和ケア病棟です。

 

理念は、“あなたの思いに寄り添い、穏やかに過ごせるよう支援します”であり、下記の基本方針で運営しています。

 

病棟の名称は「思いやり」「いたわり」のこころを大切にしたいとの思いで、その花言葉をもつ「ひなげし」としました。「ひなげし」の名に恥じないケアを患者さんとご家族に提供していきたいと願っています。

 

① 治癒や延命目的でなく、がんに伴う様々な苦痛症状を緩和する治療やケアを提供します。

 

② 患者さんの意思を尊重し、その人らしく過ごせるように支援します。

 

③ 治療やケアの方針は、必要な情報を提供し、患者さんとご家族とともに考え、決定します。

 

④ 患者さんやご家族の抱えるさまざまな問題に対し、専門職チームが協働して関わります。

 

⑤ 地域の医療機関と連携し、住み慣れた地域やご自宅で安心して暮らせるよう支援します。

 

当医療センターの緩和ケア病棟特別室(和室スペースや独立したバスルーム、トイレ、キッチンなどを備えています)

 

20床すべてが個室で、そのうち16床の個室が無料です。4床は、特別室として室料をいただいています。

 

病棟には、屋上庭園、介助浴室、広いデイルーム、キッチンも備えています。

13階からの眺望は素晴らしく、名勝 和歌浦など和歌山市内を一望できます。この景色も、患者さんと家族を癒やす一助になるのではと思っています。

 

当医療センターの緩和ケア病棟(共有のデイルームとキッチン)

 

がん診療の進歩には目覚ましいものがあるとはいえ、がんはさまざまなつらさを伴います。

 

がん患者さんのすべてのつらさに寄り添い、その人らしく過ごしていただけるよう、緩和医療の環境を整えるとともに、質の向上に努めてまいります。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを歴任したがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年から現職。

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