がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

日赤がんセンター設立を振り返って

2022/01/18

2021年1月、「日赤がんセンター」を設立しました。

 

今、日本人の二人にひとりががんに罹患するといわれます。当医療センターが積み重ねてきた総合病院としての力を結集し、がん診療を強化することはミッション(我々に課せられた使命)だと考え、4年間に及ぶ構想期間を経て着手しました。

 

センター化することにより、院内のがん診療機能が集結し、より強化しました。あえてこれまでの診療体制を変えたのは、最新のがん医療を多くの方に継続して提供したいという一心からです。

 

日赤がんセンターのキャッチフレーズは「ユニット診療による 最善のがん治療を あなたに」です。ユニットとはチームのことです。チーム医療を一人ひとりの患者さんにオーダーメイドで提供したい、その願いを込めています。

 

 

情報共有によって、最適な医療や複数の選択肢を見つけ出す

ユニット診療を行うチームには、複数の医師だけでなく様々な職種が入っています。看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士…本当に様々です。いろいろな人が関わって意見を交わす環境をつくることで、主治医がひとりで判断するよりも視野が格段に広くなり、最適・最善な治療やケアができます。

 

 

例えば、肺がんの治療で説明します。手術をする医師、初診から関わっている内科の医師、放射線治療を担当する医師や技師などが集まってユニットで議論し、「どうすれば最適か」を考えます。知識や経験を出し合って議論することで選択肢が見つかりやすく、複数の選択肢から患者さんの希望を聞きながら一緒に選択することで、患者さんの真意に寄り添った診療を提供でき、しかも、情報が集まることでチームメンバーも自然とスキルアップしていきます。

 

がんセンターを設立しユニット診療を取り入れたことで、議論の場が広がりました。場があれば自然と共有されるようになりますし、お互いに刺激も受けて全体がいい方向に進みます。設立後、診療科間、職種間、世代間の連携がとてもスピーディーに進み、これまで以上にそれぞれが意見をはっきりと言える環境が整いました。チームメンバー一人ひとりの志が高く、短期間で連携が深められたことに、私も驚いています。がんセンターの体制を整えたことで、患者さんに最善の医療をより強固な体制で提供できるようになった、そう感じています。

 

 

併存疾患のある患者さんもがん治療を安全に両立できる

心臓病、糖尿病、腎臓病、高血圧など、いわゆる「持病」を抱えながらがん治療を受ける患者さんも多くいます。併存疾患のある患者さんは、合併症が生じるリスクが高くなるなど、気をつけなければならない点があります。がん治療をしていくうちに併存疾患が悪化してしまう、ということも避けなければなりません。

 

 

そのようなケースでも、ユニット診療は力を発揮します。がん以外の治療も受けながら、安全にがん治療を行えるよう、循環器内科や糖尿病・内分泌内科などの専門医とがん治療を行うユニットが情報共有や意見交換を密にし、持病の治療と並行して総合的な診療を行っています。

 

このように、がん治療以外の面でも、より安全な医療を提供できるようになりました。これは、ユニットメンバーの一人ひとりが柔軟に対応する姿勢と、がん診療以外の専門医の惜しみない協力によって実現しています。まだ、設立して日の浅い日赤がんセンターですが、しっかりとした体制で運用をスタートしていますので、安心してお越しいただければと思います。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを歴任したがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

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