がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

患者さんにお伝えしたいこと (最終回)

2022/03/15

私が日赤和歌山医療センターの院長に就任して6年近くが経ちました。

 

2016年の春に京都大学を退官し、和歌山へやってきました。それからあっという間の6年間でしたが、日々、地域の皆さんの命と健康を守るというミッションを達成すべく、邁進してきました。私は、がん放射線治療を専門に歩んできましたから、特に、和歌山のがん医療を良くしたいとの思いが強くありました。

 

 

着任からずっと構想していた「日赤和歌山がんセンター」が2021年に発足し、院内のがん診療機能を集結・強化し、最新のがん医療を提供する体制を整えられました。

 

Withコロナの収束はまだ見えませんが、日本人の二人にひとりが罹患するがんの治療を堅持し強化する基盤ができました。多くの専門職が、臓器別に連携したユニット診療が始まったことで、一人ひとりに合わせた最適な医療を継続して実施できると考えています。

 

この「がん茶論」も、今回が最終回です。

最後に、私が和歌山のがん医療について考えてきたことを書き記したいと思います。

 

 

保険診療で認められたがん治療は和歌山でできる体制を目指して

和歌山のがん医療を良くするという強い思いで私が目指していたのは、少なくとも保険診療で認められている全てのがん治療を和歌山で受けていただけるように、当医療センターの医療体制を強化することでした。そのために5年間で必要な人材を集め、最新機器を整備し、継続して高度で最新の医療が提供できる基盤を作ってきました。病理診断や画像診断も強化してきました。

 

 

がん医療はどんどん進化、変化しています。その中にあっても、その時その時に提供できる新しい医療を和歌山県内で完結して提供できるようにしたかった。それは治療だけでなく診断、緩和、患者支援など幅広い意味を持ちます。強い思いで、実現できるよう進めてきました。

 

和歌山県は非常に広いですし、1つの病院でできることには限界もあります。もっと県内の他の医療施設と連携を進める必要もあるでしょうし、紀南地域の患者さんが和歌山市内で医療を受けやすくなるような支援も考えていく必要があるかもしれません。県内で医療が受けられれば、患者さん本人はもとより、ご家族も、負担がぐっと少なくなると思います。他府県へ行ったり来たりする、一定期間滞在するとなると、身体的にも経済的にも負担が増すからです。

 

 

日赤がんセンターを開設したことで、まず、地域の患者さんが飛び込む場所ができました。わかりやすいシンボルができたと思っています。そのため、がんセンターでは検診から診断、治療、救急、緩和、患者支援に至るまで、すべてのがん医療を実施する体制を整えました。患者さんが困ったら安心して飛び込んでいただける場所であるよう、役割を果たしていかなくてはなりませんね。

 

 

検診をしっかり受けて、早期発見を!

治療法が進歩し、最新の治療を受けられる体制があるとしても、がんを早期発見することが何より大切です。まずは、検診を定期的に受けていただきたい。それが、一番お伝えしたいメッセージです。

 

 

早期発見できれば、治癒率はグッと上がります。今やもう、がんは治らない病気ではありません。早期発見できれば9割が完治します。治療法も進化していて、入院期間も短縮され、薬物療法・放射線治療は外来で受けることができます。仕事も辞める必要はありません。

 

そして、もし体に心配なことが起きたら、日赤がんセンターを活用してください。がんの専門家が集まって知恵を出し合い、総合病院としてのメリットを生かしたがん医療を提供します。安心して、和歌山県内でがん医療を受けてください。

 

最終回までお読みいただき、ありがとうございました。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長。

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを歴任したがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

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日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

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