少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。

楽観も悲観も、どちらが・・・

2021/06/04

本屋に『ポジティブシンキング…』などといった自己啓発本が数多く並ぶ一方、「私、ネガティブ思考で・・・」とうつむく人がいるなど、世間では楽観主義が良く、悲観主義は良くないというような風潮があるようです。

 

心理学でも、これまで楽観主義が社会的成功や心身の健康をもたらすかのような勘違いをしていました。現在でも、思考が悲観的方向に偏っている場合、認知の歪みがうつ病などを引き起こすとして、認知行動療法などにより、その歪みの修正が行われることがあります。

 

そもそも人は、一般的に、自分の余命を実際よりも長く見積もっていたり、自分が事故に遭う確率を他人の確率より低く考えたりするなど、現実よりも楽観的に考えることが少なくありません。

 

しかし、高い勝算や豊富な成功経験が無いにもかかわらずあまりに楽観的なのは、自分の精神的健康を保つために思考が肯定的方向に歪んでいる場合もあります。

 

そのような意味で、楽観主義が良く、悲観主義であることが悪いとは言い難いのです。むしろ、悲観的に考えることで見逃しがちな問題の発見やリスクが回避できることもあります。

 

先の例でも、自分が事故に遭う可能性を低く考える楽観主義者より、不安を感じる悲観主義者の方が、慎重な運転を心がけるでしょう。

 

楽観主義者は、上手くいかない場面でも粘り強く取り組める一方で、ハイリスクハイリターンな決断をしてしまう危うさがあります。しかし、周囲に悲観論者がいてくれれば最悪の状況を予測して備えることができます。

 

また、私たち一人ひとりが、困難に負けない楽観的視野と状況を冷静に把握する悲観論者の視点を併せ持つことが大切です。

 

しかし、思考のバランスを保つことはなかなか難しいことです。

 

そこで、次回(2021.7.2公開予定)は、自分の思考タイプに合ったセルフコントロールで、ビジネスや日常生活でより良い結果を出す方法についてお話ししていきます。

 

 

 

坂田 真穂(さかた まほ)

日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー。

相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『ケア ー語りの場としての心理臨床ー』(福村出版, 2020)など。

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