少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。

アプローチを変えてみると…

2021/07/02

前回(2021.6.4公開)で、楽観主義と悲観主義ではどちらが良い悪いという問題はないとお話ししました。

 

楽観的過ぎると対処できたはずの事柄でも最悪の結果を招いてしまいますし、悲観的になり過ぎて行動を起こさないのも無意味です。

 

また、楽観主義者は、日頃から最高の結果を思い描くことで自信や期待から良い結果を出せる一方で、悲観主義者は、日頃から最悪のシナリオを想定することでリスクを回避できることがあります。

 

楽観主義と悲観主義、どちらにも欠点と長所があるのですが、それぞれが力を発揮できるためには別のアプローチが必要なことは意外と知られていません。

 

ダーツの得点変化に注目した実験で、安心感を抱くことで力を発揮しやすい楽観的な人たちは、リラックス音楽を聴いた後の方が、失敗をイメージした後よりも30%も得点が伸び、逆に、悲観的な人たちはリラックスしたり完璧な結果をイメージするよりもネガティブな結果を想像した方が得点が30%上昇したと報告されています。

 

また、別の実験では、試験前に「優秀な皆さんにとっては楽勝ですよ」と励まされることで楽観主義者は得点が14%上がったのに対し、悲観主義者は29%下がったといいます。

 

励まされることで自信が湧き不安が鎮まると、悲観主義者たちは必死に努力をする姿勢を阻まれてしまうようです。さらに、別の検証では、試験前に上手く気を紛らわせた悲観主義者は、不安なまま試験に臨んだ場合よりも試験結果が25%も悪かったという指摘もあります。

 

これらの実験から、悲観主義者にとっては、不安が努力や集中力の源になっていることが窺えます。そのため、悲観的な友人に「ポジティブに考えた方がいいよ」とアドバイスすることが必ずしも良いとは限りません。

 

その人本来の考え方を大切にして、それに合った方法でベストコンディションに持っていく方が成功すると言えるでしょう。

 

 

 

坂田 真穂(さかた まほ)

日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー。

相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『ケア ー語りの場としての心理臨床ー』(福村出版, 2020)など。

 

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