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少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。
2022/03/04
「苦手な人」というのは厄介なものです。
できるだけ距離をおきたいものですが、ご近所さんや職場の同僚だったりしたら、なかなかそうもいきません。
あなたにとって「苦手な人」はどんな人ですか?
「無神経な同僚」ですか?
それとも、「偉そうな上司」でしょうか?
私たちが苦手だと思う人は、実は、私たちが知らず知らずのうちに自分自身に禁じていることをしている人だと言われています。
例えば、あなたが他者を傷つけることを禁じているのであれば、相手の気持ちも考えずに言いたいことを言う「無神経な同僚」に不快感が募ります。
また、もし、あなたが高慢な振る舞いを禁じているのであれば、威圧的に命令ばかりする「偉そうな上司」を疎ましく感じるでしょう。
けれども、無意識的とはいえ、そもそも何故、私たちは自分に禁止するのでしょうか?
それは、私たちが禁じている行為への強い願望を本来もっているにもかかわらず、何らかの理由によって、その願望を満たすことができないためだと言われています。
傍若無人な言動をする「無神経な同僚」の自由さは、人間関係に気を遣うために他者を傷つけることを禁じてきたあなたが諦めた自由さ。
王様のように「偉そうな上司」は、立場上、高慢な振る舞いを禁じざるを得なかったあなたが諦めた生き方なのです。
強い願望がありながらも、自分は禁じざるを得なかったことをその人は平気でしている、それが「苦手な人」の正体です。
「苦手な人」は、私たちが生きなかったもう一人の自分 (心理学では、「シャドー」といいます) を知る鏡であり、苦手な理由を突き詰めて考えることは、自分の内なる願望を知ることに繋がっています。
今回で最終回です。長らくご愛読いただき、ありがとうございました。
坂田 真穂(さかた まほ)
日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー。
相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『ケア ー語りの場としての心理臨床ー』(福村出版, 2020)など。