少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。

心を鬼にしたときも、心の目でよく見て

2022/02/04

 

「鬼は外!福は内!」というかけ声を耳にする度、小さい頃「そんなに言うことを聞かないと鬼がくるよ」と言われて無性に怖かったことを思い出しました。

 

友人にこのことを話すと、「うちは『エンマさんがくるよ!』だった」と話していました。

 

鬼にせよ、エンマ様にせよ、昔から親たちは「言うことを聞かないと・・・」「悪さをすると・・・」、怖いものがやってくると言って、子どもにお説教をしてきました。

 

鬼とは少し違いますが、「泣く子はいねぇが?」と言って、各家を訪ね歩くことで有名な秋田県の「なまはげ」も同様の役割を果たしていると思われます。

 

スマホが普及した近年では、鬼から電話がかかってくるというアプリもあるようです。

 

しかし、通常、親や「なまはげ」は子どもが改心すれば責め続けることはなく、今度は子どもを守ってくれる心強い存在になります。

 

叱ると同時に守ってくれる存在であることが、親や来訪神である「なまはげ」の厳しくも温かいところです。

 

一方、アプリやシステムには子どもの顔色を見る機能が搭載されていないため、子どもが恐怖に陥っていようとプログラミングに従って責め続ける可能性があります。

 

子どもの精神衛生において、手加減なく叱ることは非常に危険であり、本来、お説教は効き具合を見極めながら行わなければなりません。

 

このことは、子どもへの教育だけではなく、後輩や部下への指導にも同様のことが言えそうです。

 

子どもへのお説教や後進への指導においては、相手の顔色を見極める余裕を持った、叱ると同時に相手を見守る鬼でありたいですね。

 

 

 

 

坂田 真穂(さかた まほ)

日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー。

相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『ケア ー語りの場としての心理臨床ー』(福村出版, 2020)など。

 

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