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少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。
2021/10/01
小さな子どもは、公園での遊びの最中に、ふと、ベンチに座った母親が自分を見てくれているかを確認し、手を振り返してくれるのを確認しては安心して、また遊びに没頭する・・・という行動を繰り返します。
しかし、幼稚園に上がる3才頃になると、子どもは見送りの母親と別れて一人でバスに乗り、一日を母親無しで過ごせるようになります。
イギリスの小児科医であり精神分析家でもあるウィニコットは、これを「ひとりでいられる能力」と呼び、母親の存在が内在化されることによって生じる心理的成長だと考えました。
近年、インターネット依存の中でも、特に、SNSで自分の体験や生活の一部を発信しては周囲の反応を求める「きずな依存」とよばれるタイプが増加しています。
自分の行動にフォロワーが注目し、「いいね」などの反応を返してくれることで、満足したり孤独が癒されたりするようです。こうした人たちの中には、いつも誰かとつながっていたい、つながっていないと寂しくて仕方がないという人もいます。
アドラーが「すべての悩みは、対人関係の悩みである」といったように、たしかに、私たちは他者とのつながり無くしては生きていけません。また、重要な他者とのつながりが、心の危機を乗り越える支えになることも少なくありません。
皆さんは、自分が「つながっている」と感じる人について考えるとき、いったい誰の顔が思い浮かぶでしょう。
夫や妻の顔でしょうか?
子どもの顔でしょうか?
それとも父母?
親友でしょうか?
目に浮かぶ顔は、必ずしも今いる人とは限りません。
もう亡くなってしまったおばあちゃんに大切にされた記憶、今は会うことがなくなった中学時代の親友と過ごした日々、子どもの頃いつも一緒だった愛犬・・・人はそうした過去からのつながりに支えられて生きています。
寂しさや孤独を感じる時は、目に見えるつながりだけでなく、自分の内にある存在とのつながりを感じられると良いですね。
坂田 真穂(さかた まほ)
日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー。
相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『ケア ー語りの場としての心理臨床ー』(福村出版, 2020)など。