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少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。
2021/11/05
「うちの夫は、頼まないと家のことをしてくれない」と嘆く女性は珍しくありません。また、「頼んだことしかやらない」と憤る人も…。
キャリアウーマンの友人は、そんな旦那さんのことを「家庭の指示待ち人間」だと、冗談交じりに話していました。
しかし、男性たちの言い分に耳を傾けると、「だって、良かれと思って片付けたら『ここに置かないで!』とか言うし…」と、彼らなりにやったことへのダメ出しが、自発的行動を妨げている現実が見えます。
自分の判断や行動が認められない体験が重なると、人は自信をもてなくなり、失敗や傷つきを避けようと、徐々に自分で考えることをやめてしまうようです。
これは、職場の指示待ち部下においても同じです。
指示しないと動かない、指示したことしかやらない部下は、「与えられた仕事をすればいいと思っている」「仕事が好きじゃないのだ」と非難されがちですが、実際には、何をしたらいいのか分からなくなっていることが少なくありません。
何故このようなことが起こるのでしょうか?
理由の1つに、上司が優秀すぎることが挙げられます。
部下の試行錯誤を待つよりも、最適解を与える方が効率が良いために、つい「ああしろ、こうしろ」と指示してしまうのです。
そうすると、部下は自分で考えて叱責されるよりも、上司の言う通りにする方がスムーズなので、指示を待つ習慣がついてしまいます。
初めから指示待ち人間だという場合は、生育歴等において家庭で「こうしなさい」と先回り育児をされてきた人かもしれません。
しかし、いずれの場合も、どう思うかを話させたり、可能な範囲で本人に任せる機会を増やすことで、自分で考える習慣が戻り、指示待ち癖も改善します。
また、自分が指示待ちだと感じる人は、単に指示を仰ぐのではなく、「私はこう思うのですが、どうでしょうか…?」と相談するよう心がけましょう。
忖度(そんたく)も過ぎれば自分を見失います。ほどほどが良さそうですね。
坂田 真穂(さかた まほ)
日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー。
相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『ケア ー語りの場としての心理臨床ー』(福村出版, 2020)など。