がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

薬物療法② 効果

2021/03/16

薬物療法は、がん治療の中の1つです。薬によってがん細胞を攻撃したり、「免疫チェックポイント阻害剤」でがん細胞によって免疫が抑制されるのを防いだりして、患者さんを治療していきます。

 

薬物療法を行う目的は2つあります。患者さんの症状によってどちらの目的を目指すか変わるのですが、まず、それぞれの目的についてご説明していきます。

 

 

薬物療法の目的・・・治癒を目指す

がんの種類によりますが、薬物療法によってがんの治癒が期待できます。白血病、悪性リンパ腫などの血液・リンパのがんが代表的です。薬物療法で治癒の期待があれば、治療の第一選択が薬物療法となります。

 

また、手術の前後に薬物療法を行い、根治性を高めることも大きな役割です。併用することによって、がんが根治する可能性が上がります。すべての手術で薬物療法が併用されるわけではありませんが、特定のがんでは、患者さんの状況によって行います。

 

手術前の薬物療法は、手術でがんを取り除きやすくするために、がんを小さくする目的で行われます。手術後は、手術でがんを取り除いても、目に見えないくらい小さながんが体の中に残っている可能性が少なくない場合に行います。再発の可能性を減らせます。

 

放射線治療と組み合わせてがんの治癒を目指す「化学放射線療法」は、局所に留まっているけれど、少し進行しているがんに対する標準治療です。多くのがんが対象となり、がんが少しくらい進行していても、切らずにがんを治癒に導く有力な方法です。

 

このように、さまざまな形で薬物療法を治療の中に取り入れ、治癒を目指します。

 

 

薬物療法の目的・・・QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を高める

がんが進行してしまった場合にも、薬物療法が行われます。その進行を遅らせたり、あるいは、がんを縮小させたりするためです。

 

これらの目的は、QOL(生活の質)を保ちながら、できるだけ長く生きていただくこと。進行がんであっても、薬物療法が効果を発揮すれば、QOLを高く維持しながら、患者さんが生きられる期間が長くなります。

 

また、がんによって起こってしまうさまざまな不快な症状を和らげる目的でも薬物療法は行われます。薬物療法の効果によって辛い思いが減り、QOLが向上します。

 

がんの治療は治癒、根治だけを目的として行われるものではありません。

患者さんが少しでもその人らしく過ごすことができるように、治療が一役買うのです。

 

次の記事から2回にわたって、実際に薬物療法で使われている抗がん剤の治療方法や効果、副作用についてご紹介していきます。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを歴任したがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

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