がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

薬物療法① 特長と利点

2021/02/16

今回から4回にわたり、がん治療の1つである「薬物療法」についてご説明していきます。

 

薬物療法は、がん治療の三本柱の1つです。

残りは、外科的な治療法である「手術」と、体にメスを入れずに放射線の照射によってがん細胞を消滅させる「放射線治療」です。

 

薬物療法は単独で行うことも、手術や放射線治療と組み合わせることもあります。どのようながんにも、1つで対応できる万能な治療はないため、患者さんの状況に合わせて治療の組み合わせを考えていきます。どれかが優れているわけではなく、最適な治療は何か?を都度考えます。その中で薬物療法が最適として、治療に取り入れられることがあります。

 

 

では、薬物療法がどんな治療か、説明していきましょう。

 

薬物療法の特長

がんの薬物療法は、薬(薬剤)を使ってがんを治したり、進行を抑えたり、症状をやわらげたりする治療です。

 

手術や放射線治療が局所に留まったがんに対する治療であるのに対して、薬物療法はがんが一箇所に留まらず、広い範囲にがん細胞が広がってしまっていたとしても治療できるのが最大の特長です。

 

近年、この薬物療法の進歩は目覚ましいものがあります。特に、これまでの治療とは全く違う、新しい視点から治療ができる「免疫チェックポイント阻害剤」と呼ばれる新薬が登場し、世界中で注目されました。

 

この薬の開発については、私の母校の大先輩である本庶 佑氏がノーベル医学生理学賞を受賞するきっかけとなりましたので、ご存知の方も多いと思います。この薬の開発は画期的な発明であると多くの報道機関が報じましたね。

 

 

この免疫チェックポイント阻害剤は、がん細胞に直接作用するのではなく、がん細胞によって抑えられていた免疫機能に働きかけて再び活性化させ、がんが免疫によってやっつけられるようにする仕組みを持ちます。既に、がん治療には欠かせないものとなり、適応のある患者さんには当センターでも積極的にこの治療を取り入れています。

 

 

薬物療法の利点

薬物療法は、手術や放射線による治療と比較して長期間に及ぶことが多く、以前はほとんどの患者さんが入院して治療を受けていました。

 

しかし、最近では、患者さんのスケジュールや希望に合わせて、外来で通院しながら治療することもできるようになりました。もちろん入院と同じ治療を安全に受けることができます。

 

当センターでも外来での薬物療法の実施数は年々増加傾向で、薬物療法センターにはベッド12床、リクライニングチェアー8床を備えています。快適にくつろぎながら治療を受けていただいています。

 

リクライニングチェアーには、それぞれテレビがついており、院長メッセージや館内案内などもご覧いただけます。

 

 

厚生労働省も「治療を受けながら働ける職場づくり」を支援しており、外来治療であれば、これまでと変わらず働きながら治療を受けることも可能です。がんの治療を受けながらも、仕事など社会や家庭での生活が同じように続けられることは、患者さんの精神的にも経済面でも非常に大切なことです。

 

これまでにできなかった治療が薬の開発によってできるようになる薬物療法により、進行がんと診断されても長く生きられるようになりました。これからもさらに新しい薬ができ、治療の幅が広がっていくことでしょう。薬の研究に期待したいですね。

 

さて、次の記事では、薬物療法を行う効果について詳しくご説明します。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを歴任したがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年から現職。

詳しくはこちら

日赤和歌山医療センターHP

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