日赤和歌山医療センターの医師が健康や病気についての情報をお届けするコーナーです。専門医がさまざまなテーマを解説します。みなさんの健康保持にお役立ていただければ幸いです。

コロナに打ち勝つ身体づくり 『禁煙のススメ』

2020/08/24

2020年は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによる幕開けとなりました。

 

国内では緊急事態宣言が発出され、一時は感染者数を抑え込むことができましたが、再び増加に転じ、気候や温度変化による減少も見込めないため、夏も秋もコロナウイルスの感染予防に努めながらの生活になります。

 

今回は、新型コロナウイルス感染症の重症化要因として注目されているタバコとの関係について、第二呼吸器内科部長の池上 達義先生にお話しいただきます。

                                                                                                                                          

 

なぜ、これほどまでに新型コロナウイルス感染症が怖がられているのでしょうか?

 

それは、感染者の約80%は無症状であったり、数日の発熱や嗅覚・味覚の鈍化などの軽症ですむ一方、約20%もの人が酸素投与や肺炎治療が必要な中等症から重症になると言われています。そして、残念ながら現在の医学では、数%が死に至ることも分かってきました。

 

 

PCR検査が今ほど容易でなかった初期には、CTで肺炎の白い影が確認できたことで、新型コロナウイルス感染症を疑うくらいでした。「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)」は肺・呼吸器に影響する病気で、重症例や死亡例の多くで、肺炎を合併しています。

 

まだ、ウイルスの特徴や治療法などで分からないことが多い時期ですが、どんな人が重症化しやすいかということは、ある程度分かってきました。

 

若年層では無症状や軽症が多く、中高年以降、加齢に伴って、また、基礎疾患がある人ほど重症化するようです。そして、それらに加え、喫煙歴や受動喫煙の状況、すなわちタバコも重症化の原因となるようです。

 

先日、新型コロナウイルス感染症患者さんを含めた約1万人の健康に関する複数の調査を統合分析した結果が公表されました。

 

 

それによると、タバコを喫わない非喫煙者では重症化したのが17%だったのに対し、タバコを喫っている喫煙者(喫煙歴のある人を含む)は30%が重症化していました。他の多くの研究でも、喫煙者の方が2倍程度重症化しやすいとされています。

 

その理由として、タバコを喫うと、気管支の粘膜が傷つけられ、感染に対して防御する力が低下していることが考えられます。同じ理由で、喫煙者にインフルエンザや細菌による感染が多いことが、従前から知られています。

 

新型コロナウイルスは、肺炎を起こす頻度が高いのですが、なぜ肺炎を起こすのか、肺の細胞に感染しやすいメカニズムも分かってきました。

 

(イメージ画像です)

 

新型コロナウイルスの顕微鏡写真をテレビや新聞などでご覧になった方も多いでしょう。球形のウイルスにトゲトゲの突起がたくさんあります。肺の細胞もツルンとすべすべではなく、乱暴に例えるとジャガイモのようにくぼみがあり、形や大きさもいろいろです。

 

新型コロナウイルスのトゲトゲの突起が、肺の細胞の表面のくぼみにはまり込み、これを足がかりにして肺の細胞内に侵入して、全身に広がっていくのです。

 

この肺の細胞のくぼみをACE2受容体と呼びますが、タバコを喫うほどこのACE2受容体の数が増えることが分かってきました。タバコによってACE2受容体のくぼみが増えて、新型コロナウイルスがより多く肺に侵入するとすれば、喫煙者が新型コロナウイルス感染症で肺炎を起こしやすく、重症化する原因の1つと言えるかもしれません。

 

COPD(慢性閉塞性肺疾患)などの慢性肺疾患、高血圧や狭心症などの心疾患、糖尿病などの基礎疾患を持っている人の新型コロナウイルス感染症による死亡リスクが高まることも知られていますが、タバコを喫うことが加わると、さらに重症化するリスクが増えてしまします。

 

 

2020年4月に受動喫煙防止法(改定健康増進法)が施行され、屋内での喫煙は原則的に禁止となったため、どうしても喫煙所に集まりがちになります。喫煙所は狭いところも多く、換気扇か煙を吸い取る空気清浄機はあるでしょうが、密接、密集でマスクをせずに会話したりする環境では、感染リスクが増えてしまいます。

 

加熱式タバコや電子タバコと呼ばれる新型タバコについては、まだデータが少なく実証されていませんが、基本的に従来の紙巻・葉巻タバコと同じ成分が含まれています。また、タバコを吸い込んだ息には、肺の粘膜を傷つける微細な粒子状物質も紙巻・葉巻タバコと同じくらい含まれていることが分かってきているので、安全とは言えないと考えられます。

 

喫煙者にとっては、タバコを喫うことによって様々なリスクがますます高まり、周囲にもそのリスクを広げている状況は、新型コロナウイルスを取り巻く状況と非常に似ています。

 

感染を予防したい、自分のせいで周囲の人のリスクを高めたくないと思われたら、今こそ「禁煙のチャンス」です。Withコロナの時代だからこそ、逆転の発想でトライしてみてはいかがでしょうか?

 

 

健康な人でも、マスクをしながら身体を動かしたり、家事や散歩をすると、息苦しく感じます。タバコをやめて、傷つけられた肺の細胞が修復してくると、マスクをはずしたときの息のしやすさと同様の快適さが待っています。

 

また、喫煙者は口腔内や鼻の粘膜も傷ついているため、禁煙者に比べて味覚や嗅覚も衰えていると言われています。新型コロナウイルス感染症の症状の1つである味覚・嗅覚の鈍化を、早期発見できるように禁煙してみるのも良いかもしれません。

 

多くの人が、通勤・通学、仕事や買い物中にマスクを着ける生活です。マスクをしている間は、タバコを口元に持っていかないなど、禁煙にマスクを活用してみるのも良いでしょう。

 

 

当センターでは、呼吸器内科に『禁煙外来』という専門外来を設け、医師・看護師が治療とともに禁煙サポートを行っています。

 

約3ヵ月間の「禁煙チャレンジ」に成功されると、修了証を発行しています。参加された方は、くじけそうになったときに「もう少しで、修了証をもらえるんだ。修了証を家族に見せて、祝杯をあげよう」と、励みにされたと聞いています。

 

禁煙方法には、飲み薬と張り薬、ガムなどがあり、健康保険も適用されますので、以前より自己負担額も抑えられます。

 

「禁煙」で、健康を取り戻しませんか?

 

詳しくはこちら

日赤和歌山医療センターHP

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