がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

Withコロナのがん治療① 感染症流行時は受診を控えるべきか

2020/07/21

2019年末に中国から流行しはじめた新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)は、瞬く間に世界中に広がり、国内でも急速に拡大しました。

 

この流行下においては、当センターはもちろんのこと、すべての医療機関で新型コロナの感染症対策をしながら医療を提供するということが求められています。

 

当センターは地域を支える高度急性期病院として救急医療、がん治療を含む高度な医療を提供する使命があり、それは新型コロナの拡大時にあっても変わりません。

 

感染症病床では新型コロナに感染した患者さんを受け入れてきました。地域の皆さんの健康を守るため、感染対策チームが活躍しています。

 

ただ、新型コロナの影響で、「もしかしたら、病院で感染するかもしれない」と必要な受診や各種検診を控えている人もいるようです。

 

 

かかりつけ医にがんと告知されたけれど、大きな病院へ行って新型コロナにかかれば、健康状態が悪化しそうだとか、がんより社会的に「なぜ、感染の可能性が考えられる行動をしたのか」と詰問されそうな新型コロナにかかったら困るなどといった心配・不安があるようです。

 

皆さんが、そう思われるのもよくわかります。そこで、今回は感染症が発症している時期の医療機関の受診についてお話していきます。

 

 

前提として、感染症病床はウイルスが漏れない構造になっている

 

ニュースを見ていると医療機関における院内感染が続発していますが、当センターのように空調や排水などの設備が整った感染症病床から院内感染が起こることは、まず、ありません。感染の拡大を防止する特別な設備が整っていて、働いている職員もその分野のエキスパートだからです。

 

患者さんの受け入れはいつでも安全に行えるよう、移動ルートの確認、防護服の着脱、防護服を着用しての患者さん対応、汚染物の処理など、念には念を入れて行っていますし、定期的に訓練もしています。

 

当センターでは、感染症病床以外の病棟や外来でも、感染対策チームの中心メンバーが感染拡大防止に目を光らせており、月に1度の厳しいチェックがあります。

 

 

そのような設備と職員の努力から、これまで感染患者さんから職員への感染もなく、職員から感染者が発生したことはありません。新型コロナ対応についても、厚生労働省から要請を受けてクラスター対策班の一員として2人の感染症専門医を派遣しています。

 

専門家が対策の舵をとっていますから、今後も当センターに新型コロナの患者さんが入院しても、感染病床から他の患者さんに感染させることはありません。安心して入院、受診をしていただきたいと思います。

 

 

無症状で新型コロナに気づいていない患者さんから感染する心配は?

 

病院に入ってくる時点で、すべての人にAIサーモグラフィで発熱を確認しています。また、当センターにも、国の検査体制強化によってPCR検査機器が整備されました。疑いのある人にはPCR検査を行いますので、かなりの確率で防止できると考えています。

 

 

感染の確率の高い人と、感染している可能性が非常に低い人を分ける区域分け(ゾーニングという)を徹底しているので、感染が大きく広がるという心配はないと考えています。

 

また、飛沫が飛びやすいお産や、ウイルスが増幅されやすい鼻や喉の奥を手術する耳鼻咽喉科や口腔外科の手術では、事前にPCR検査をするなどの対策を取っています。学会から出ているガイドラインに基づき、適切に対応しています。

 

大きな病院ほど治療の選択肢が多く、手術の延期など相談できる

 

これだけの対策をしているとはいえ、院内感染しないという100%の安全はどこにもありません。これは、どんな手術も100%安全と言えないのと同じです。そして、このことは全国どの病院も同じだと言えます。

 

「感染が怖いので受診しない、がんの様子をみる」「感染は怖いけど、がんの進行を考えて治療を受ける」と、ご自身でしっかりと決断するのも重要なことでしょう。ご自身の病気ですから、主体性を持って、どうすべきか考え、判断することは良いことだと思っています。

 

ただ、中には、非常に緊急性の高い手術もありますし、待てない病気というものもあります。

 

ですから、まず一度は病院を受診し、医師と相談してください。このとき、大きな病院ほどたくさんの治療の選択肢がありますので、「今は手術をしたくない」「入院を避けたい」など意思をはっきり伝えてくだされば、できる範囲でご希望に合わせてホルモン治療や在宅・外来での薬物治療を先にするなど、選択肢を提示できます。

 

検診についても同じで、「内視鏡検査を延期する」「定期的な検査を1年飛ばす」などの対応ができることもあります。

 

ただ、どんな病気でも進行しますから、胃カメラなどの内視鏡検査で取り切れたはずのがんが進行したことによって、腹腔鏡手術などで治療する段階になってしまうなど、延期による悪影響も出てくるでしょう。個人差がありバランスを取るべきところなので、まずは一度病院で相談が必要です。

 

 

当センターの「がん相談支援センター」では電話でも対応しています。

 

これまでにがんと診断されている方のみですが、当センター以外の病院にかかっている方でも治療の相談に乗りますので、気軽にお電話ください。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年から現職。

詳しくはこちら

日赤和歌山医療センターHP

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