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がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。
2020/05/19
さて、ここまでがん治療の最新動向等をお伝えしてきましたが、一度、話を昔へ戻しましょう。
今でこそ手術といえば麻酔するものと皆さん思っていますが、昔、19世紀までは、手術は耐えがたい痛みと傷口の化膿で、患者さんにとって非常に厳しいものでした。
19世紀に麻酔法が開発され、20世紀には次々と新しい麻酔薬もでき、外科治療は大きく発展しました。
和歌山の偉人「華岡青洲」による麻酔薬の開発

麻酔について特筆すべき点は、和歌山県が生んだ偉人「華岡青洲」の業績です。
彼は、現在の和歌山県紀の川市出身の外科医です。ご存知の方も多いかもしれませんが、世界で初めて全身麻酔による乳がん摘出手術に成功しました。
彼はチョウセンアサガオと数種類の薬草を配合した麻酔薬「通仙散」を開発し、その薬剤を手術に用いました。そして1804年、全身麻酔による手術(乳がんの手術)を世界に先駆けて実現したのです。それはまだ江戸時代のことでした。
この業績は全国に広がり、紀州藩主にも大きく評価されています。
麻酔薬の次に、鏡視下手術が普及

麻酔薬の使用により、メスで胸部や腹部を大きく切り開く開胸・開腹手術も、患者さんは痛みをあまり感じずに手術が受けられるようになりました。
しかし、大きく切り開く手術では、体の負担が大きく、炎症や感染症のリスクが高いなどの問題がありました。
そこで、胸部や腹部を大きく切り開かずに小さな穴を数ヵ所開けるにとどめ、内視鏡、あるいは手術器械を入れて手術を行う低侵襲な鏡視下手術が普及してきたのです。
患者さんにとっては、① 合併症の予防ができる、② 手術の創口が小さいため術後疼痛が少ない、③ 早期離床につながり入院期間も5〜7日と短くなる、など多くの利点があります。
また、医師にとっても、3Dハイビジョンカメラを用いることで繊細な画像を得ることができるため、出血量が少なく質の高い手術が可能となります。
患者さんにやさしい手術を目指して
もちろん利点ばかりではなく、がんの状況によって、また、重要な臓器が複雑に入り組んだ領域では鏡視下の手術ができない場合もあり、開胸・開腹手術より時間がかかる傾向にあるなど、鏡視下手術にも問題点があります。
それでも、鏡視下手術の対象となるがんの種類は急速に増えていて、多くのがん手術で鏡視下手術が主流となっています。胃や食道、大腸などの消化器のがん、肝臓や胆管、膵臓などの肝胆膵領域のがん、肺がん、膀胱がんなどがあります。
当医療センターでは、消化管外科が行う手術以外にも、呼吸器外科・泌尿器科の領域でも鏡視下手術が積極的に行われ、産婦人科でも実施しています。そして、耳鼻咽喉科においては、頭頸部に対する鏡視下手術が高い評価を得ています。
患者さんにとって、鏡視下手術は身体に優しい治療ですが、一方で、外科医にとっては限られた視野で手術を行なわなければならず、胸部や腹部を開いて行う手術と比べて手術時間も長時間にわたるため優しいとは言いがたいです。
つまり、医師としては鏡視下手術はむしろ難易度の高い手術です。技術的にも高いものが求められるため、学会により医師に対して技術認定の制度が設けられています。
当医療センターには、この技術認定を獲得した専門医が多く在籍しています。日々、技術的に高度な鏡視下手術を各種のがんに対して行っていますので、経験も豊富です。安心して手術を受けていただければと思います。
平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)
日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長
1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。