がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

がん対策基本法と、地域がん診療連携拠点病院(高度型)

2020/02/20

がんは、日本人の2人にひとりがかかる怖い病気です。

これほどかかる頻度が高く、死に至るような病気はほかにありません。盲腸など聞き馴染みのある病気より、がんははるかに患者数が多く、まさに「国民病」といえるものです。

 

しかし、がんにかかることを必要以上に恐れる必要はありません。私たちは「がん対策基本法」や「がん対策推進基本計画」によって守られており、誰もが平等にがんの診療を受けられます。全国どこに住んでいても、一定以上のレベルのがん医療が受けられるよう環境整備されています。

 

 

この「がん対策基本法」は、厚生労働省が2006年に制定した法律です。その法律に則して、誰でも標準的な治療を受けられるようにするための整備が進められ、全国にがん診療連携拠点病院が指定されました。その病院の数は2次医療圏に1つあり、現在は全部で393箇所あります(令和元年7月1日現在)。

 

 

全国にある各拠点病院が、がん医療に責任を持って対応しましょうという形を進められてきたわけですが、400近い病院の数となってくると、それぞれの診療機能に違いがあり、その違いが医療安全の確保などの意味で課題となっていました。

 

そこで病院の機能や実績に応じて区分が設けられました。当センターは、「高度型」に指定されています。「高度型」は2019年4月につくられた新しい区分で、全国14ヵ所の病院が選ばれています。これは、国が「がんに対して責任のある病院」を選んだ、お墨付きを与えたということで、画期的なことだと思っています。

 

当センターが「高度型」に指定された理由はいくつかありますが、まずは、がんに必要な機能を網羅しているということです。治療体制だけでなく、設備やマンパワー、緩和医療への取り組み、そして、患者さん・ご家族の思いを尊重したサポート体制なども含め、当センターには総合的な機能が備わっていると評価されたといえます。

 

 

もう1つは診療実績です。

 

当センターの年間の手術件数は全国35位で、がんをはじめ、多くの手術をしています。和歌山県内の人口を考えれば、非常に手術件数は多いといえます。全国には、大学病院だけでも70以上あり、当センターと同規模の病院も数多くあります。その中で、これほどの患者さんに来ていただいていることは我々の誇りであり、地域医療を担う原動力になっています。

 

また、救急搬送の受け入れも多く、医療範囲とすれば和歌山全体の1/3くらいを担っています。和歌山市と共同運営しているドクターカーをはじめとした重症患者さんや、他の医療機関からの転院の受け入れなども積極的に行っています。

 

これら両方の診療が機能していることは全国的に見ても珍しく、それも評価されるポイントになったのではと感じています。

 

 

このように皆様のニーズに応える努力や、医療だけでなくトータルでがんに関する機能を提供して実績を残してきたことが全体として評価され、地域がん診療連携拠点病院(高度型)に指定されたことは大変光栄なことです。決意を新たにし、これからも県内のがん医療の底上げに努めてまいります。

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

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