いつ来るか分からない災害。日赤和歌山医療センターは、どんな対策をしているの? どんな概念や指針、ガイドラインで対策しているの?ちょっとマニアックな情報をお届けして いきます。赤十字の病院が行う救護について知っていただけたら幸いです。

南海トラフ地震とは?

2020/03/12

日本赤十字社和歌山医療センター(以下、当センター)は、災害が発生した場合に、県下全域をカバーする医療救護の中心的役割を担う病院として、和歌山県総合災害医療センターに指定されています。

 

また、日本赤十字社の災害派遣医療救護チームである日赤常備救護班、厚生労働省が定める災害派遣医療チームである日赤DMATも有し、阪神・淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、平成30年7月豪雨等の大規模災害に職員を派遣してきました。

 

熊本地震の救護に向かう救急車と救護班員

 

「救うことを、つづける。」では、当センターの活動や災害・救護に関する情報についてお話していきます。第1回として、今後30年以内に80%以上の確立で発生すると想定されている南海トラフ地震についてお話ししたいと思います。

 

2011年の東日本大震災を初め、2016年の熊本地震、2018年の北海道胆振東部地震など、大地震が頻発しています。メディアでは日本列島が地震の活動期に入ったとも報道され、特に懸念されているのが南海トラフ地震です。

 

日本付近のプレート模式図(気象庁HPより)

 

そもそも南海トラフとは、静岡から九州にかけて、大陸側のユーラシアプレートに海側のフィリピン海プレートが沈み込む「海溝(トラフ)」と呼ばれる海底4000m級の溝状の地形のことです。このプレート境界を震源として発生する大規模な地震が「南海トラフ地震」です。

 

歴史上、南海トラフ周辺域では、それぞれ東海地震、東南海地震、南海地震などマグニチュード8クラスの大地震が約100年の周期で発生し、大きな被害をもたらしてきました。

 

直近では、1944年に昭和東南海地震、1946年に昭和南海地震が発生していて、既に70年以上が経過していることから、対策が急がれています。

 

南海トラフ地震は、「海溝型地震」に分類され、広範囲にわたる大きな揺れとともに、大津波が発生するのが特徴です。

 

東日本大震災と同規模のM9クラスの地震が発生した場合、静岡県から宮崎県にかけて広範囲に震度7クラスの揺れが発生する上、関東から九州にかけての太平洋沿岸部に10メートルを超える大津波が襲うことが予想されています。最悪の場合、死者は約23万人にのぼると想定されています(中央防災会議発表)。

 

和歌山県は、南海トラフ地震が発生した場合、大きな被害を受ける都道府県の1つです。M9クラスの巨大地震が発生した場合、県内全域が震度5強~7の揺れに見舞われ、和歌山県南部から和歌山市までの沿岸部は津波により壊滅的な被害を受けると予想されています。

 

南海トラフ巨大地震発生時の震度分布(和歌山県地震被害想定調査報告書より、一部改変)

 

東日本大震災での津波被害の大きさは記憶に新しいと思いますが、南海トラフ地震は、東日本大震災に比べ震源域が陸に近いため、短時間で津波が襲ってきます。

 

串本町では17mの津波が3分で襲来すると予想されており、避難は困難を極めます。そのため、高台への施設の移転や、避難のために津波避難タワーの建設などの対策が行われています。

 

平成26年10月公表の和歌山県津波浸水想定図(内閣府防災HPより)

 

ですから、いざ地震が発生した時に、どれだけ被害が出て、どこに逃げればいいのかを各市町村が開示しているハザードマップや防災マップなどで日頃から知っておく必要があります。

 

避難経路を確認したり、家族の集合場所や連絡手段などをあらかじめ決めておくことが避難行動を迅速に行うためには重要です。

 

また、南海トラフ地震が発生すると、揺れによる家屋倒壊や津波被害、広範囲で停電・断水・通信の遮断(ライフラインの停止)などが発生し、長期間にわたって不自由な避難所生活をおくることになります。

 

被害を受けるエリアが広大であり、道路の損傷などで流通も滞ることも予想されることから、避難生活に備え、日常的に最低3日分の水や食料、生活必需品などの備蓄をしておくことが重要です。

 

≪ 文・資料 災害医療救援センター ≫

 

 

第2回は「災害対応の原則」について解説します。お楽しみに!

詳しくはこちら

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