病院では医師、看護師、助産師、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、診療放射線技師、臨床工学技士などいろいろな専門職が集まり、日々の治療を支えています。患者さんの身体も心もケアできるようにと、日々努めている仲間たちを紹介します。

外科部長インタビュー ~外科医のやりがいと指導体制~

2019/09/25

日赤和歌山医療センターは2016年に消化管外科、2017年に肝胆膵外科を発足させ、外科を3領域にグループ分けして診療に当たっています。医師はそれぞれの科を兼務しながら、あらゆる領域に関わっています。高度医療や救急への対応はもちろん、所属医師の技術力アップにも力を入れています。

今回は熱心な指導で多くの医師に慕われている宇山志朗外科部長に、外科医のやりがいや面白さ、指導体制について伺いました。

 

 

まず日赤和歌山医療センターの外科の体制や、手術件数について教えて下さい

3つの科がありますので、3人の部長がいて、所属医師は兼任も含めて20人います。年間の手術件数は約1,350件。この数字は、関西圏では屈指の手術件数です。がんの手術が多いですが、救急も24時間受け入れる体制のため緊急手術も年間250件程度あります。

 

胃がん・大腸がんなど消化管の手術は、ほぼすべてを内視鏡手術で行っています。腹腔鏡を進展させたロボット手術は、2016年に胃がんで開始しました。山下消化管外科部長が胃がんのロボット手術の熟練指導医(プロクター)に選ばれ、手術資格申請者症例見学指定施設(メンターサイト)にも認定されています。最先端の医療から、救急対応による一般外科の治療まで、幅広く行っています。

 

最新型の手術支援ロボット「ダヴィンチXi」を導入

 

やはり、いちばん力を入れているのは高度医療でしょうか?

もちろんロボット手術に代表される高度な先進医療を地域の方々に提供するのも当センターの外科として重要な役割です。とはいえ、それだけに注力しているわけではありません。あらゆる外科治療を手がけています。「この分野が苦手」というのはないと自負しています。高度医療から救急、そして一般外科の治療まで、技術が遅れているものはないと思っています。これが当科のいちばんの特徴といえるかもしれませんね。

 

そのほかには、国際救援ですね。国内に5ヵ所ある日赤国際救援拠点病院の1つなので、色々な職種の職員が活発に国際救援活動を行っています。当科からも外科医を派遣しています。その活動を目的に入ってくる医師も増えていますね。

 

ウガンダで診療する宇山部長(詳しくは、こちら

 

それだけ幅広いことをするのは医師としては大変だと思います。

入職した医師はどのように学んでいくのですか?

指導体制はしっかりしています。3人の部長だけでなく、若手の育成・指導に関心のある医師も多いので、若手医師も自分で執刀して指導を受けるという形で経験を積むことができます。

 

また、ただ手術の件数を積み上げるだけでなく、資格の取得も後押ししています。例えば、日本内視鏡外科学会の技術認定医には、当センターからこの2年間に5人が合格しています。受験した全員が合格しているので、合格率は100%です。全国の合格率は3割以下と聞いていますので、ハードルの高い資格もクリアできる環境にあるといえます。こういった資格の取得は、その手術を適切に指導できる人材がいるかどうかがポイントになりますので、自分の手術をするだけでなく若手の医師に適切な指導ができているといえます。

 

 

本人のキャリアに大切な資格試験等に関してもしっかり指導しているので、若手の医師たちは皆、意欲があります。さまざまな技術が身につくので手術が好きになってきます。外科医は一人前になるまで時間がかかると言われますが、これだけの数の手術に携わって幅広い症例を見れば、十分に成長できます。どうしても手術は時間がかかるので長時間労働になる側面はあるのですが、これまでに「労働時間が長い」という理由で退職した医師はいません。やりがいや自身の成長を感じてくれているのではないでしょうか。

 

手術以外にも意識して教えていることはありますか?

患者さんとのコミュニケーションの取り方ですね。外来や救急で患者さんと直接お話をしますが、いろんな患者さんが来られます。どういう説明をすると分かりやすいのか、その場その場で考える必要があり、経験が少ないと大変です。納得してもらえる信頼関係をどうやって築いていくか、若手医師にも指導しています。

 

当センターには救急で経験を積みたいと入職する医師も多いのですが、特に救急外来では患者さんやそのご家族からいろいろな質問やご要望を受けます。瀕死の人を救えるのが外科医ですが、何が患者さんにとって最善かを考えることも大切です。そのようなことをきちんと伝えていけるようにと思っています。

 

救急外来(ER)には、一般診察室以外に重症診察ユニットも完備

 

そして、それらの経験から救急での外科対応に軸足をおいて研鑽したいという医師には、救急部門と兼務できる勤務体制を整えています。救急外来で働く外科医も、集中治療室で働く外科医もいます。本人のやりたいことができる環境を一緒に作っていくという感じですね。

 

 

手術以外にもたくさんのことを学び、経験を積めそうですね。

さて続いては、外科医として働く細川慎一先生にも、職場の環境ややりがいについて伺いました。

 

細川先生も毎日たくさんの手術を執刀されていますが、大変ではありませんか?

まぁ、そうですね。手術に加え、外来や入院患者さんの診療もありますから、時間のやりくりや診療に関する苦悩は絶えないですね。しかし、それ以上に、やりがいや充実感も感じています。

 

外科医は、患者さん一人ひとりの状態に合わせて治療方針や適切な術式などを考えて執刀し、多くの症例を積み重ねないと一人前になれません。患者さんのためにも、たくさん手術を経験し、技術を習得していくことは必要で、今がその時期だと思っています。

 

それに、手術をたくさんしていると、やはりうまくなってきます。そうすると自然と興味や関心の幅が広がってきて、どうすれば良いのか、安全性や身体への負担軽減、社会復帰まで、もっと考えるようになります。これまで治らなかった人を治せるようになる可能性があり、より良い医療の提供につながると思います。

 

外科・消化管外科・肝胆膵外科と関連する消化器内科を1つにした外来窓口

 

日本内視鏡外科学会の技術認定医も取得されたそうですが、受けてみていかがでしたか?

普段から丁寧にしているので、基本的にはいつも通りの手術をしました(※実際に技術を判定するために手術を録画したビデオを提出する)。指導医が一緒だったので安心感があり、気持ちも落ち着いていました。

 

認定を取得したということは、基礎に当たる技術が身についているということ。わたしは大学院で研究して、そのあとにこの技術認定医を取ったのですが、もっとたくさんの若手医師にチャレンジしてもらいたいですね。

 

1フロアに21室の手術室を整備した手術センター

 

外科医としてスキルアップを目指す方々にメッセージをお願いします

指導体制がしっかりしていますし、たくさん手術を経験できるので力が付きます。これから内視鏡(腹腔鏡)手術がもっと増えるはずですが、当科では進行がんなどの高難度症例にも積極的に内視鏡(腹腔鏡)手術を実施しています。手術経験を積みたい方はぜひ一緒に働きましょう!

 

 

宇山 志朗(うやま しろう)

1996年入職。外科部長 兼 外傷救急部長。

日本外科学会専門医、日本赤十字社国際医療救援登録要員。

 

細川 慎一(ほそかわ しんいち)

2015年入職。外科部副部長 兼 消化管外科部副部長 兼 肝胆膵外科部副部長。

日本外科学会専門医、日本消化器外科学会消化器外科専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医。

 

※ 2020年4月、手術室2室を1室にする拡張工事を行い、ハイブリッド手術室を稼働したため、手術室数は22室から21室に修正しています。

 

 

 

 

 

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