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少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。
2019/06/07
知人のSNS(ソーシャルネットワークサービス)を見て、「あいつはこんなに活躍しているのに…」「あの子は毎日楽しそう。それに比べて私は…」と落ち込む人が少なくありません。
逆に、ニュースなどで他者の悲惨な状況を耳にすると、「自分はまだマシなほうだ」と、こころの安定を図ることもあります。
前者を上方比較、後者を下方比較といいますが、上方比較を行うと劣等感を、下方比較を行うと優越感を感じやすくなります。
この劣等感と優越感は真逆のもののようですが、実は根っこが同じ。つまり、劣等感が強い人ほど優越感も感じやすい(その逆も然り)と考えられています。
なぜなら、このような人は、自分の価値を他者との比較から判断する点で同じだからです。
しかし、自己価値を他者との比較に頼っていることで、時に、自己承認欲求(認められたい願望)が強くなりすぎたり、容易に不安に陥ることがあります。
「隣の芝生は青い」ということわざもあるくらい、自分を他者と比較することは日常的ですが、それによって気持ちが安定しても、より青い芝を見るや否や落ち込んでしまうことが多いでしょう。
最近の研究では、他者と比較するよりも、相手の幸せを願うことで不安が減少するということがわかってきました。
アイオワ州立大学の研究チームが、すれ違う相手に対し、
①「幸せになるよう願う」グループ、
②「共通点を探す」グループ、
③「自分の方が優れた点を探す」グループ、
④「相手の持ち物に注目する」グループ
に分けたところ、相手の幸せを願うよう教示された人たちは、不安が減少し、精神状態が改善していることが確認されたのです。
人の幸せを願うことは、「人よりマシでありたい」と願う競争意識とは別の、温かい共存の意識に包まれるからなのかもしれませんね。
(臨床心理士 坂田真穂)