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海外の紛争・災害などに対して、医師や看護師などの職員を派遣し、国境や宗教、人種を超えて人の命と健康、尊厳を守る活動に取り組んでいます。
2018/08/18
ヨルダン・ハシュミテ王国、どこにあるかご存知ですか?
世界遺産めぐりや歴史が好きな方は、死海やペトラ遺跡などのイメージがあるかもしれません。ヨルダンは、中東地域にある国の一つで、シリア、イスラエル、イラク、サウジアラビアに面しています。
中東と聞くと、情勢が不安定なイメージを持つかもしれません。ましてやシリアやイラクと聞くと、さらに情勢不安なのではないかと、遠い日本に住む私たちは考えがちです。しかし、隣の国々で紛争が続いているという事実がまるで嘘に思えるほど、基本的には穏やかで平和な国です。
では、何故そんな平和な国に支援が必要なのかと言うと、この国には周辺国で起こっている紛争によって祖国を追われて避難してきた人々が沢山いるからです。背景には、2010年チュニジアで起きた対抗勢力のデモを端に、瞬く間に中東各地に広がった民主化運動がシリアにもおよび、シリア各地でデモや内戦へと変化し、現在も多くの武装勢力が対立し、泥沼化している状況があります。シリア危機と呼ばれ、21世紀最大の人道危機とも言われています。
ヨルダンは、中東では比較的安定した治安を維持しているので、以前から難民(パレスチナやイラクなどから)が多く移住してきていた歴史があります。しかし、その数が2011年のシリア危機以降、急激かつ莫大に増えて、シリア難民だけでも既に66万人以上に上ります(2018年6月UNHCR調べ)。
彼ら難民を取り巻く環境は日に日に悪化しています。例えば、当初は無料で医療サービスを受けられていましたが、難民の数が膨大になりすぎたゆえ、ヨルダン政府がサポートしきれず有料化に踏み切り、その負担額も徐々に増加しています。
また、シリア難民は就業できる職種が限定されており、収入も限られているので、病気になっても薬を買うお金がありません。病院があるにもかかわらず、行けないという現実があります。
難民キャンプにいれば、国連やNGOの支援を受けやすいのですが、キャンプの外に出るには、都度都度、許可を申請しなければならないなど制限された生活を余儀なくされています。数年にわたるなど長引く難民生活から、実際、ヨルダンにおけるシリア難民の8割が難民キャンプ以外で親族や友人などを頼って細々と生活をしています(2018年7月UNHCR調べ)。
一方で、支援が必要な人はシリア難民ばかりではありません。ヨルダンの人々にも生活に困っている人は沢山います。そこで、日本赤十字社も協力している国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)による中東紛争犠牲者支援事業では、赤十字の精神である人道や中立の立場に立って、シリア難民だけでなくヨルダン人へも支援事業を展開しています。
2017年12月からヨルダンの首都アンマンにあるヨルダン赤新月社とともに支援活動を始めて半年が経ちました。普段、病院では看護師として働いていますが、こちらでは健康増進を含む保健活動や、ヨルダン赤新月社と協働して地元ボランティア(シリア人、ヨルダン人など)を育成する教育プログラムを実施し、疾病の予防の知識や情報を住民に伝えています。これらの活動により、有料化している医療サービスを補完し、地域の健康レベルの維持に貢献していきたいと考えています。
長期化するシリアの紛争と終わりの見えない難民問題に対して、赤十字は決して諦めることなく草の根レベルの活動を一歩一歩重ね、ひとりでも多くの人を救うことを続けています。
私も、2017年12月に赴任してから、活動を通じて赤十字活動の無限に広がる可能性を見てきました。これからも地元の赤新月社スタッフ、ボランティアの活動を精一杯支えていきたいと思っています。そして、地域への健康支援に貢献できるよう努めていきたいです。遠い地域の馴染みのない活動かもしれませんが、これを機会に、お一人でも関心を寄せていただければ幸いです。
「和歌山から世界へ」では、様々な国際活動をレポートしていきます。出発式のほかにも、現地での活動、帰国報告会、国際人道法や語学・熱帯医学などの研修風景などをお届けします。乞うご期待!