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声をだすって、すばらしい!

2023/02/21

コロナ禍以後、人と話す機会がめっきり減ったという方も多いかもしれません。

 

ここ数年、会社や集まりで宴会することは少なくなり、会議なども対面で話すよりも、オンラインでマイクを使って会議をすることが増え、近くにいてもSNSなどを使い、話をしないことすらあるそうです。

 

 

感染対策のためには仕方がないことかもしれませんが、声を使わないと、いったいどういうことが起こるのでしょうか?

身体の変化に目を向けてみます。

 

声を出すとき、まず、脳から肺に息を吸い込むように指令が行きます。

すると、呼吸筋の働きで胸郭が拡大し、横隔膜が押し下げられて、肺の容量が増え、たくさん息を吸い込もうとします。

 

そして、肺に入った空気を使って、声は出されます。吐く息の一部が声になっているのです。

 

吐いた息は、肺から気管、喉頭を通ります。喉頭には、声帯という声のもとを作る器官があり、肺からの空気が声帯を通過するときに、声帯を振動させ声がでます。

その声帯を振動させるために、喉頭周囲のさまざまな筋肉が働いています。

 

声帯が振動しているかどうかは、一度やってみるとよくわかるのですが、のどぼとけのあたりを、指で押さえながら「あー」 と言ってみてください。すると、指がブルブルと震える感覚がわかるかと思います。

 

 

次に、先ほどと同じようにのどぼとけのあたりを、指で押さえながら、静かにしてもらうときの「しー(声をださない、ささやき声で)」をやってみてください。

どうでしょう? 振動していないのがわかりますか?

 

「あー」は、声帯が振動する有声音で、「しー」は、声帯が振動しない無声音です。

声帯で発せられた声のもとは、喉頭より上の口や鼻までの部分を巧みに変化させることで、いろいろな声になります。

発声時には、呼吸から始まり、のどや口、さまざまな器官・筋肉が働いています。

声を出さないことが増えると、そのような動きが起こらず、筋力の低下を引き起こします。

 

次に、発声時に良い呼吸は、胸式呼吸よりも腹式呼吸と言われています。

発声する時は、安静時よりも、たくさんの息が必要になります。吐く息を大きくするために強い力を発揮するのが腹筋です。胸郭をふくらませようと胸式呼吸でがんばると、声帯を動かす筋肉などに不要な力が入って、声がかすれたり、出なくなくなることもあります。

そのため、発声時には、腹式呼吸ができるとよいのですが、もともと腹式呼吸ができる人は少ないです。自然に腹式呼吸を行うための練習として、2つご紹介します。

 

ストローを使う方法

ストロー(内径12mm程度の太いストロー)を、長さ半分に切って使います。

ストローを口にくわえて、口か鼻から息をすうと、お腹に息が吸い込まれます。その後、くわえたストローに息を入れるように、長く息を吐きだします。

 

 

何度かしっかり息をだす練習を繰り返した後に、今度は、息をはくときに声を出してみてください。ストローをくわえたまま声を出すと、「ふー」といった音になります。

 

この声をしっかりと、響かせるように繰り返してください。響いているかどうかは、ストローに触れている唇がブルブルと震える感覚・こそばゆい感覚があれば大丈夫です。声を出さないときは、もちろん響きません。

 

できるだけ長く息を吐き続けてみてください。10秒以上続けば、正常範囲です。男性の場合は30秒を目標に、女性の場合は、20秒以上を目標に練習しましょう。

 

吹き戻しを使う方法

吹き戻し(別名:紙のピーヒャラ笛、まき笛、ピロピロ笛、BLOWOUTSなど)を、ふいて伸ばし、10秒間キープすることを10回セットとして、1日3回、週3回程度を目安に練習してみてください。

 

 

ご自身の体調によって、頻度・回数は調整しながら、徐々に増やしましょう。

また、吹き戻しの長さや材質によって負担感が変わってくるため、楽にできる場合は、短いものから長いものに変更してみてください。

 

吹き戻しは、昔からあるおもちゃですが、最近では、呼吸のほかにも口腔周囲・鼻咽腔などの運動が行えることから、発声、嚥下機能の訓練用具として使われています。

 

発声には、まず、呼吸が大切です。声をだすことだけにとどまらず、最終的には、会話するようにしましょう。しかし、会話の機会が少なかったり、会話する時間や量が少ない場合にも、ストローや吹き戻しを使った練習をすることで、機能や筋力を維持できます。

 

いったん筋肉を委縮させてしまうと、回復には、十分な栄養とトレーニングが必要です。声をだすときに使う器官は、嚥下(飲み込み)を行う器官とほぼ重なっています。声を出すことは、飲食物を飲み込む機能の維持・強化にもつながります。

 

文・・・日本赤十字社和歌山医療センター リハビリテーション科部

 

 

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