筋力をアップしたい、肩や腰の痛みを軽減したい、身体の柔軟性を保ちたい・・・運動機能を維持・向上させ、いつまでも健康な身体でいられる運動やコツをご紹介します。

買い物と認知機能

2022/12/20

買い物に行って、「何を買えばいいのか、いくつ買えばいいのか忘れてしまう」、「ついついお札で支払いして、小銭が貯まってしまう」といった経験は、ないでしょうか?

 

 

一時的な物忘れかもしれませんが、認知症の前段階である軽度認知障害の場合もあります。買い物で戸惑ったり、食事の準備が億劫になったり、公共交通機関の乗り方が分からなくなったり、服薬を忘れたりすることが増えてくる段階です。次第に、周囲の人の手助けが必要になり、行動範囲が狭くなっていきます。

 

さらに、認知症になると、認知機能の低下によって日常生活動作が難しくなります。同じ物を何度も買ったり、不必要な高額商品を購入したりして、家族が認知症と気づくきっかけになることもあります。

 

記憶障害により、冷蔵庫に何があるか覚えていないため、同じものを買う

● 消費期限を理解できなくなり、献立(計画)を考えることも難しくなるため、売り場で目についたものを、食べきれるか考えずに買ってしまう

● 欲しいという衝動が抑えられず、高額商品でも買ってしまう

 

このような買い方が、問題になってきます。

 

 

原因としては、

●  記憶力の低下(何を買うか忘れる、メモをしても忘れてしまう)

● 判断能力の低下(衝動買いをする)

● 過去の習慣(仕事や育児で忙しかった時期を誇りに思っていて、その当時の習慣に沿った行動をする)

ことが、挙げられます。

 

認知機能の維持には、脳のワーキングメモリが欠かせません。単に記憶するのではなく、何かの作業をするために一時的に情報をとどめておく脳の働きを指します。

 

たとえば、

● レシピを読み、そのとおりに料理をする

● 人に聞いた道順に従って、目的地に行く

● 相手の質問を覚えておいて、後ほど答える 

などです。

 

ワーキングメモリは、特に、最近のことを記憶する短期記憶を担っていますが、加齢に伴って衰えていきます。

 

 

記憶力や認知機能を維持するためには、日常生活での動作を意欲的に行いましょう。さらに、脳トレにつながることに挑戦してみるのも一案です。

 

認知機能を維持・向上させる日常動作のコツ

● 料理・・・ときどき、普段あまり作らない料理を思い出しながら調理する。

●  計算・・・買い物しながら、レジまでに購入品の合計金額を予想してみる。

● 掃除・・・買い物するものや、献立などの段取りを考えながら、掃除する。

● 新しいことにチャレンジ・・・パソコン、ゲーム、スポーツ、楽器、手芸、語学などを始める。

● 会話・・・相手の話をよく聞くために、メモをとったり、聞いた話を思い出して書く。

● カラオケ・・・新しい歌を覚えたら、できるだけ歌詞を見ずに思い出しながら歌う。

 

 

トレーニングのために頑張るぞ!と構えずに、そのこと自体を楽しみながら、長くつづけられると良いですね。

 

また、生活のために、買い物は必須です。買い物には、次のような効果が期待できます。

 

● 歩行・・・自然とたくさん歩くことができ、筋力・体力維持につながります。

● コミュニケーション・・・店員さん等と会話したりして、人や社会とのつながりが生まれ、社会参加になります。

● 商品選択・・・商品を選ぶ(空間認知)、棚から取る(リーチ動作・バランス能力)など、1つひとつの動作がリハビリになります。

● 支払い・・・予算を考えながら商品を選んだり(計算能力の維持)、お金の出し入れで、指先の細かい動きを自然と行います(手指巧緻動作)。

 

 

周囲のサポートを受けながらも、ご自分で買い物し、いつまでも楽しく日常生活を送れるとよいですね。

 

文・・・日本赤十字社和歌山医療センター リハビリテーション科部

 

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

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