海外の紛争・災害などに対して、医師や看護師などの職員を派遣し、国境や宗教、人種を超えて人の命と健康、尊厳を守る活動に取り組んでいます。

南スーダン戦傷外科病院での活動

2022/05/21

約半世紀もの長期にわたる内戦を経て、2011年7月に独立した南スーダン共和国。しかし、その2年後に首都ジュバで武力衝突が勃発して以降、国内での対立が繰り返されています。

 

外務省HP(ODA政府開発援助メールマガジン)より転載

 

2018年に和平合意が締結された後も、南スーダンの人々が直面している状況は悪化しています。

 

民族間の武力紛争が絶えず起こっているため、医療機関に行くことや安全な水を得るなどの公衆衛生サービスへのアクセスは制限されています。新型コロナウイルス感染症の問題も大きくのしかかっています。

 

武器外傷の患者をICRCチームが搬送する様子(© ICRC 2020)

 

さらに、気候変動がもたらした記録的な洪水と局地的な干ばつによる被害も重なり、水、衛生、健康、教育など、様々な側面で、厳しい状況が続いていることから、多くの人々が国内外への避難を余儀なくされています。

 

国連人道問題調整事務所(OCHA)は、2022年現在、南スーダンの人口の3分の2以上の890万人が人道支援を必要としていると推定しています。この数字は、2021年から60万人増加しています。

 

日本赤十字社は、紛争の犠牲となった人々を支援するため、医師や看護師を派遣しています。当医療センター看護師長の吉田千有紀は、2004年に独立前のスーダン共和国に派遣されて以降、2006年~2007年にスーダン共和国、2015年~2016年に南スーダン共和国で活動しました。

 

2016年、南スーダン派遣当時の吉田

 

今回、2022年2月から、赤十字国際委員会(ICRC)が南スーダン共和国の首都ジュバで支援する病院に、事業管理者として派遣されています。

この地域で数少ない専門的な外科治療ができる病院で、吉田は武器外傷者の搬送支援や病院管理業務などに日々携わっています。

現地から活動の様子が届きましたので、ご紹介します。

 

私は現在、南スーダン共和国で活動しています。

南スーダンの派遣は今回で2度目です。独立前のスーダン共和国にも派遣されており、私にとって、とてもご縁のある国の一つです。南スーダンの人々は、良くこう言います。「ナイルの川の水を飲んだあなたは必ず戻ってくるから、さよならは言わない」

 

この地域は、国内紛争、飢餓、自然災害が絶えないところです。特に2011年、独立を果たした南スーダンでは、多民族間の争いにより、約230万人の難民、約160万人の国内避難民が厳しい環境下で生活しています。2018年以降、和平合意を進める中、紛争で傷ついた人々の生活再建、健康増進、医療の向上が当面の課題です。

 

特に、武器外傷治療を行う施設は限られており、私たち赤十字国際委員会の支援する病院の存在は重要です。日々、遠くから搬送されてくる外傷者を受け入れ、治療を継続しています。

 

南スーダン共和国ジュバの病院での治療の様子(© ICRC 2019)

 

こちらは現在、雨季に入りつつあり、時折、雷とともに、あたりがまったく見えないぐらいの激しい雨が降ります。その中での搬送支援は大変ですが、幸い、元気に活動できています。

 

私たち医療従事者にとって、自身の安全を確保しながら、患者さんの健康回復を目指すことは、やりがいにつながっています。満面の笑顔で退院される患者さんをみて、良かったなあと心から思います。

 

十分な医療環境と言えないところですが、最大限の治療とケアを提供していきたいです。これからも日本赤十字社の活動にご支援いただければ幸いです。

 

 

日本赤十字社和歌山医療センター 国際医療救援部

 

「和歌山から世界へ」では、様々な国際活動をレポートしていきます。出発式のほかにも、現地での活動、帰国報告会、国際人道法や語学・熱帯医学などの研修風景などをお届けします。乞うご期待!

 

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日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

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