海外の紛争・災害などに対して、医師や看護師などの職員を派遣し、国境や宗教、人種を超えて人の命と健康、尊厳を守る活動に取り組んでいます。

ハイチ地震の緊急救援に参加して

2022/01/15

2021年10月4日(月)~11月7日(日)の1ヵ月間、カリブ海に浮かぶ「ハイチ共和国(以下ハイチ)」にて医療救援活動を行ってきました。

 

ハイチは、カリブ海に浮かぶ島国の1つで、イスパニョーラ(エスパニョーラ)島の西部に位置しています。島の東部は、ドミニカ共和国です。真っ白な砂浜と神秘的なブルーで彩られたカリブ海の風景はもちろん、山々の中にも素晴らしい自然を見ることができます。

 

2021年8月14日(土)、現地時間8時29分にハイチを襲ったマグニチュード7.2の地震は、2,200名を超える死者と12,000名を超える負傷者を出し、今もなお復興の光が見えていません。

 

 

私は普段、この病院の薬剤師として働いていますが、今回、フィンランド赤十字社が中心となってハイチの南西部レカイという都市に設営された野外病院で、「医薬品などの医療物資の管理者(Medical Logistics、以下メドログ)」として活動してきました。

 

これまでも、ネパールの地震やバングラデシュの避難民救援で緊急医療支援に赴いたことはありましたが、今回は約200人のスタッフの中で、「日本人は私だけ」という、いまだかつて経験したことのない環境でした。

 

また、行きも帰りも、このコロナ下で何度も飛行機を乗り継ぐ必要があり、常にチャレンジングな状況が待ち構えていました。

 

 

しかし、「どんな状況であっても、自分のベストを尽くしたい‼」という強い思いで、毎日を必死に駆け抜けてきました。

 

あいにく英語が流暢に話せない上、ハイチの公用語であるフランス語は全く分からないため、意見や気持ちをストレートに伝えられないことも多く、悔しい思いもたくさんしましたが、いつも周囲のスタッフが「大丈夫だよ!」「一緒に頑張ろう!」と助けてくれ、その励ましで、与えられたミッションに挑み続けることができました。

 

現地の薬剤師と一緒に働く場面が数多くあり、彼がいてくれたお陰で、薬局での医薬品管理の業務をスムーズに、かつスピーディーに推し進めることができました。

 

彼は、薬剤師としての知識が豊富であることに加えて、バイタリティが旺盛で非常に優秀だと感じました。その彼から「ハイチの医療事情」をたくさん教えてもらったことで、より現場の意向に沿った活動ができたように思います。

 

 

もちろん、色々な事情で業務が思うように進まないこともありましたが、その都度、彼と協議をし、より良い方法を探り続けました。また、意見が異なることも少なくありませんでしたが、お互いの「ハイチ住民のためになる仕事がしたい!」という思いを十分に理解していたので、常に前向きな議論を重ねられました。

 

ハイチは、2010年にも大きな地震があり、10年以上経った今も、復興途上にあるように感じました。加えて、大統領が暗殺されるといった政情不安、ギャング等による暴行などで、治安は悪化の一途を辿っています。

 

その渦中で、今回また地震が発生し、さらに苦しい状況に置かれている人々は少なくありません。現地スタッフと話している中で、ハイチでは『医師の診察は無料』だが『薬は自費』という医療機関が多いことを知りました。

 

 

薬代が払えないために、病院に行かない人も多いとのことでした。赤十字の野外病院では、診察も薬も無料です。診察の後、薬を待つ人々から「ありがとう!」という言葉をたくさん聞きました。

 

赤十字の活動が、役に立っていることを実感できて、とても嬉しかったです。これらの活動が多くの方からのご支援によるものと感謝しつつ、今後も、国内外を問わず困っている人々に寄り添う救援活動に参加できるよう精進していきたいと考えています。

 

 

  日本赤十字社和歌山医療センター 国際医療救援部 

 

「和歌山から世界へ」では、様々な国際活動をレポートしていきます。出発式のほかにも、現地での活動、帰国報告会、国際人道法や語学・熱帯医学などの研修風景などをお届けします。乞うご期待!

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