海外の紛争・災害などに対して、医師や看護師などの職員を派遣し、国境や宗教、人種を超えて人の命と健康、尊厳を守る活動に取り組んでいます。

海外派遣に備えること① ~要員の派遣経験から~

2021/05/15

今回は、派遣要員に登録されてから派遣に至るまでに備えておいた方がよいことの一例を、実際の派遣経験からお伝えします。日本赤十字社の国際医療救援要員として登録されるための研修プロセスについては、2020年5月16日の『国際救援・開発協力要員になるには』で紹介していますので、そちらをご覧ください。

 

 

派遣が決まるまでに備えること

 

無事、研修が終了して派遣要員に登録されてからも、準備することはたくさんあります。

 

派遣地では、色々な面で制限が多いです。自分なりに要員として効率的に動くために必要なことを想像して、日頃から少しずつでも取り組むようにしていきます。

 

具体的には、日々、従事している医療従事者や事務職員としての業務でそのスキルを磨く、また、国籍も背景も様々な派遣チームメンバーと円滑に働けるように、対人コミュニケーション能力や英語力を高める、PCやスマートフォン上のコミュニケーションツールに慣れておく、体調を整える、などです。

 

特に、派遣中の体調管理はとても大事で、初めての派遣では、予想以上にストレスを感じる場面も多いので、現地で心身の調子を崩すことを避けるため、普段から自分なりに体調管理や弱点への対応法、リラックス方法を知っておくことをおすすめします。

 

個人的な体質ですが、野菜不足になると体調が崩れてしまうのに、生野菜やサプリメントが苦手なので、派遣されたバングラデシュでは、野菜スープを自作して常備していました。

 

日本では、野菜ジュースや様々な種類のサラダがコンビニなどで簡単に購入できますが、バングラデシュではそうはいきません。

 

そのときは自炊ができましたが、緊急派遣の時などは自炊できないこともあります。そのような場合に備え、自分の体に合うサプリメントなどを予め見つけておくのもよいかと思います。

 

市場で手に入る季節の野菜を使ったスープ

 

また、バングラデシュのレストランの食事には、ぱっと見ただけではわからなくても、大量に油が使われていることが多かったです。派遣初期、外食の後に胃の調子が悪くなったことがあり、油っぽいものを食べすぎないように気をつけました。

 

日本円で60円ほどの定番朝ごはん。チャパティにも卵焼きにも野菜の煮込みにも、油がしっかり使われている。

 

知らないうちに不調に陥ってしまうことがないように、自分でコントロールしやすい食事は、特に、意識的に先手をうって調子を整えるようにしていました。

 

他にも、好みのルームシューズやルームウェア、アロマ製品を持参する、景色の良い場所を見つけるなど、業務外の時間は、疲れをためずにリラックスして過ごすように心がけていました。

 

宿舎近くのホテルから見える夕陽

 

次に、環境を整えることについてお話しします。要員登録されたら、日頃から家族や上司・同僚などと良好なコミュニケーションを保ち、いつ派遣されても理解してもらいやすい環境を作るのも大切です。

 

国際救援には、派遣される要員本人だけではなく、要員を送り出す家族や職場からの協力が不可欠です。派遣で不在にしている間、公私に渡りサポートをしてくれる周囲の人々には、感謝の気持ちはもちろんですが、進捗状況や緊急連絡先など必要と思われる情報を適切に伝えるよう心がけます。

 

また、この準備期間中に、身近な派遣経験者から話を聞いたり、国際医療救援拠点病院(日本赤十字社医療センター、名古屋第二赤十字病院、大阪赤十字病院、日本赤十字社和歌山医療センター、熊本赤十字病院)の公開研修会や勉強会に参加してみて、自身の派遣地での活動イメージをふくらませることもおすすめです。

 

オンライン化が急速に進んでいて、気軽に参加できる研修会や勉強会が増えています。研修会などの詳細は、日本赤十字社の『国際要員ウェブサイト』で見られます。

 

このサイトでは、国際要員や要員を目指す人に向けたお知らせや関連資料のアーカイブなど、様々な情報が公開されています。「日本赤十字社」「要員ウェブサイト」と検索してみてください。

 

日本赤十字社 国際要員ウェブサイト トップページ(2021.5現在のもの)

 

さらに派遣経験を重ねていくと、各分野のより専門的な研修や、国際赤十字が主催する研修に参加することもできます。

 

他国の赤十字・赤新月社の職員やICRCおよび連盟の職員とともに、より詳しく包括的な内容の研修を受けられるとともに、次の派遣に向けたネットワーク構築の機会にもなります。

 

 

日本赤十字社和歌山医療センター 国際医療救援部

 

「和歌山から世界へ」では、様々な国際活動をレポートしていきます。出発式のほかにも、現地での活動、帰国報告会、国際人道法や語学・熱帯医学などの研修風景などをお届けします。乞うご期待!

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

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