少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。

第3回 そのドキドキの正体は?

2018/07/06

「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのである」というのは、アメリカの心理学者W.ジェームズによる有名な言葉です。つまり、感情によって身体的変化が起こるのではなく、身体的変化によって感情が起こるのだというのです。確かに、ある調査によると、女性の犯罪の62%は月経の1週間前に起こっており、月経直後は2%しか起こっていないということが報告されています。このことは、月経によるホルモンバランスなどの身体的変化により、怒りや敵意など犯罪に結びつく感情が喚起されることを表しています。しかし、腹がたった時にも、デートで緊張している時にも、心拍数や発汗量は増大します。このように、同じ生理的変化であっても、私たちが別の感情を体験するのはどうしてでしょうか。

ダットンとアロンという心理学者が行った「吊り橋実験」(1974)では、吊り橋を渡ってきた男性たちに見知らぬ女性(実験協力者)が連絡先を渡したところ、頑丈な橋を渡ってきた場合よりもより多くの男性が女性に連絡してきました。この実験では、被験者の男性の中に『吊り橋を渡る恐怖感によるドキドキ(生理的緊張)』を『魅力的な異性と対面したドキドキ(性的興奮)』と間違えて認知した人がいたことがわかります。私たちは、同じ生理的反応でも、置かれている状況をどう認知し、身体的変化の原因を何に帰するかによって、生起してくる感情が異なるのです。

たとえ興味の無い異性と一緒でも、お酒を飲めば、楽しい夢見心地の気分になり身体も火照ってきます。これは、まるで相手に恋をしたときのような状態ですから、アルコールによるうっとりとした気分を一緒に飲んでいる相手に対する恋心だと錯覚してしまう人も少なくありません。私たちは好きな異性を飲みに誘うことがよくありますが、実はこれも、無意識のうちにこの理論を応用させているのかもしれませんね。

 

(臨床心理士 坂田真穂)

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