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少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。
2020/11/06
皆さんには、お気に入りの一着がありますか?
色合いが素敵だったり、高級感のある素材でできていたり、それを着るだけで5㎏も痩せて見えたり…。
そんな服を着た日は、心なしか足取りも軽やかになります。
洋服は“自分らしさ”を表現できる楽しみの1つです。
一方で、職人の作業着などのように、服に機能性を求める場合や、“子どもらしさ”“清楚さ”のように特定のイメージを強めるために服を選ぶこともあります。
大切な人を喪った悲しみを黒い喪服を纏うことで表現することもあるでしょう。
こう考えると、服を選ぶという行為は、まさしく他の動物には見られない非常に高度な人間的行動だといえます。
また、身に着けた服は本人だけでなく、他者にもさまざまな影響を与えます。
警察官の制服が捜査への協力的な態度を促すという研究は有名で、こうした警察官ユニホームへの信頼性から、パイロットや警備員のユニホームがデザインされているといいます。
同様に、もともとは汚れがわかりやすく清潔を保つためにデザインされた医療従事者の白衣に、人が潜在的に安心や信頼を感じるのも不思議ですね。
このように、私たちは相手の服装によって特定の印象を抱き、心理的な影響を受けています。
さらに興味深いのは、先ほどの白衣など白い服は、着ている本人も実際に道徳的行動を意識するようになるという研究があることです。
白い服を着ることで道徳性を意識するから相手に安心感を与えるのか、白い服によって相手から安心感を向けられることでより道徳性を意識するようになるのか・・・。
皆さんは、どんな自分でありたいですか?
どんな風に見られたいですか?
坂田 真穂(さかた まほ)
日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー。
相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『いのちを巡る臨床―生と死のあわいにいきる臨床の叡智』(創元社, 2018)など。