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がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。
2020/09/22
今回は、がんの話から少し外れるかもしれませんが、非常に関心の高まっている感染症について詳しくお話したいと思います。
2019年末に中国で流行した新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)ですが、和歌山県でも2020年2月中旬に初めて感染が確認されました。
仁坂知事の陣頭指揮のもとPCR検査を積極活用した「和歌山モデル」が奏功し、感染拡大を抑えられましたが、現在も感染がちらほら確認されており、今後も感染が拡大して大きな波が到来する恐れがあり、気が抜けない状況です。
これまでも新型インフルエンザやSARS、MERSなど、世界的に大流行した感染症はいろいろあります。ペストやスペイン風邪、エイズ、そして日本では戦前に結核が大流行していました。
感染症は人類と古くから関わりを持っています。そして、新型コロナだけでなく、今後も感染症と私たちは付き合っていかねばらならない、と言えるでしょう。
感染症対策は、新型コロナが収束してからも非常に重要で、科学的根拠に基づいて予防や治療をしていく必要があります。
がんと同じように感染症も予防、早期発見へ
はっきり言って、日本では戦前に流行した結核が収束した後は、感染症への関心が薄れていたといっても過言ではありません。
結核が流行していた頃は、結核治療の病院が多くありました。診療する部門として呼吸器内科は残っていますが、感染症や結核治療ができる病院は少なくなりました。
このことは医療分野における話ですが、今回の新型コロナの流行で市民の皆さんも感染症対策の知識を急いで勉強したという方も多いはずです。
当センターには感染症専門医が5人いて、エボラ出血熱などの強毒で致死性の高い感染症にも対応できる一類感染症病床が2室、新型コロナウイルス感染症などに対応する二類感染症病床が6室あります。県内では、最も厳重な感染症病床を持ち、病床数も比較的多いと言えるでしょう。
逆に、がんに関しては非常に理解が進んできました。治療法も増え、高度な医療ができるようになりました。
患者さんも治療を受ける病院を選択したり、予防のために検診を受けたり、意識を持たれている方も多いですね。
新型コロナにより感染症に光が当たりましたので、今後はもっと知識、感染症対策や予防の技術が上がってくるでしょう。がん治療のように、感染症も多くの方々に周知されて、予防、早期発見ができるようになるはずです。
検査の体制が整えられたり、治療薬、予防のワクチンなども開発されるようになり、他の病気とも合わせて治療するなど総合的なアプローチもできるようになるでしょう。
患者さん自身で病院、治療を選んでいく時代
日本では、ひと昔前は「先生、お願いします!」と医師にすべて一任する傾向が強かったと言えますが、今後はどの病院にかかるか、どんな治療をするか、患者さんが主体となって考えていかなければならないと思っています。
今回の新型コロナの影響で、今、この時期に病院に出向いてこの検診を受けるべきか、治療を受けるべきかなど悩まれた方も多いと思います。
それが『自分で考える』ことの第一歩です。海外ではその考え方が広まっているので、日本でも当たり前のことと浸透してほしいと感じています。
医師、専門医にすべて任せればいいではなく、自分がどうしたいか、生涯を通して健康や病気との付き合い方を考えることが大切です。
「先生に決めてもらえたら」「先生の言うとおりにします」とおっしゃる方が多いですが、やはりご自身の病気ですから、医師に依存的・忠実的になりすぎない方がいいですね。
医師やご家族、関係各所と相談し、その上でご自身の納得できる形を模索し、決めていくことが、ご自身にとって最良の医療となることを忘れないでほしいです。
我々は、治療だけでなく、その決断のためにも精一杯サポートしていきたいと考えています。
平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)
日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長
1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。