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少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。
2020/07/03
幼稚園に登園する子どもが、母親に「でっかい眼鏡で僕のこと見ててね!」と言っていました。
その和やかな会話を聞きながら、子供のころ「悪いことしたらお空から神様が見てるよ」と言われたことを思い出し、悪いことをすればバチが当たるという躾の昭和臭になんだか苦笑してしまいました。
しかし、案外そうでもないようなのです。
最近行われた世論調査で、「バチ」があたるということが「ある」と思う人は76%に上り、「ない」の23%を大きく上回っていました。
しかも、同様の調査を半世紀余り前にした際には、「ある」が41%、「ない」が40%だったことから、現代の方が「バチあたり」を信じる人の割合が高くなっていたのです。
科学やコンピュータの進化にも関わらず、信心深い人が増えたのでしょうか?
そうかもしれませんが、働いても変わらない不況の中で、『アリとキリギリス』の童話のように、まじめな人が報われる世界を人々が望んでいるように思えてなりません。
つまり、まじめなアリを肯定するために、不まじめなキリギリスへの罰を望んでいるのです。
身近で不幸に遭った人がいると、同じことが自分にも起こるのではないかという不安が高まります。
そして、「悪いことをしなければ、あんな目に遭わない」「あの人は悪いことをしたのだ」「自分とは違う」と結論することで、自分に降りかかる不運の可能性を無意識的に否定し、不安を押さえようとします。
今回の新型コロナウィルス感染症の流行でも、SNSなどで陽性者の行動が中傷されるといったことがありました。「勝手な行動をしたからだ」と思うことで、自分が感染することへの不安をかき消していたのかもしれません。
けれども、他者へのバチを信じて安心するのではなく、誰かが「でっかい眼鏡で」自分の善行を見ていてくれることを信じて過ごす方が素敵ですよね。
坂田 真穂(さかた まほ)
日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー。
相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『いのちを巡る臨床―生と死のあわいにいきる臨床の叡智』(創元社, 2018)など。