病院では医師、看護師、助産師、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士、診療放射線技師、臨床工学技士などいろいろな専門職が集まり、日々の治療を支えています。患者さんの身体も心もケアできるようにと、日々努めている仲間たちを紹介します。

がん専門薬剤師インタビュー ~大学院博士課程と仕事の両立~

2019/11/25

和歌山県出身で、大学在学時以外は地元・和歌山で過ごしてきた藤原大一朗さん。和歌山県内に4人しかいないがん専門薬剤師(2019年6月現在)を取得し、週末に大学院へ通ったりと、自ら学びを求めて積極的に行動されています。

 

薬剤師という職業の将来まで見据えた上で、今、自分は何をすべきか考えている藤原さん。病院薬剤師の役割ややりがい、そして近い将来、AI(人工知能)が及ぼす影響まで幅広くインタビューに答えてくれました。

 

 

なぜ日赤和歌山医療センターへの就職を希望したのですか?

 

和歌山に薬剤師の資格が取れる大学がなく、地元を離れ進学しました。けれど、和歌山に帰りたいと思っていました。地元で何かできればいいなと。

 

薬剤師の主な就職先は、企業、病院、薬局とありますが、私は、いろいろな疾患が勉強できる大きい病院に入ろうと思っていたので、日赤和歌山医療センターを選びました。県内でも薬剤師の数が多い病院です。

 

働く前に思っていた通り、調剤業務でも規模が大きければ薬の種類の幅が広く、患者さんの数も多いのでいい経験になります。また、薬剤師の数も多いと業務も幅広いです。いろいろできると楽しいですよね。直接業務には関係ないですが、職場に人数が多いと人間関係も柔和になる気がします。働きやすいですね。

 

 

これまでにどのような仕事をしましたか?

 

1年目は調剤業務を担当しました。

当時は院内処方だったので、調剤する数も多く非常に忙しかったのですが、そのとき数をこなした経験が今の自分の下地となっています。調剤業務では処方箋をみて患者さんがどんな病気か推察するのですが、そのあと病棟勤務になったときに、「あぁ、やはりこの疾患ではこのように薬剤が投与されるんだな」と、知識と経験がつながり、学びが深まっています。

 

 

2年目から耳鼻咽喉科の病棟担当になりました。

入院患者さんへの薬の説明と、副作用のフォローをしていたのですが、その中で、抗がん薬や放射線治療による副作用の症状を見て…。症状が重くでる患者さんもおられ、治療を継続していく上で、QOLとのバランスを取るのが難しいケースもありました。がんに関する薬剤の知識を増やして、そういったところに介入できないかと考えたのが、次のステップへの始まりですね。

 

がんに関する薬剤師の資格は、がん専門薬剤師、外来がん治療認定薬剤師、がん薬物療法認定薬剤師などいくつかあるのですが、職場ががん専門薬剤師研修施設だったこともあり、がん専門薬剤師を取得しました。

 

 

大学院の博士過程に通われていますが、博士号を目指されたのはステップアップの一貫ですか?

 

そうですね。部署内の上司に、薬学博士が1人、医学博士が1人います。

そういう人が身近にいたというのも、目指そうと思ったきっかけのひとつになりましたね。でも、博士号を持っているからといって、業務で「目立って変わることは何もない」とは言われています(笑)。

 

それでも、患者さんに提供できることが増えないか、今やっていることは本当に正しいのか考えたり、一つひとつの内容を客観的に評価できるようになったりしているので、新しい視点を持てる自分になってきていると感じます。大学院に行ってよかったと思います。

 

 

社会人の大学院生は、どんなことをするのですか?

 

週末に講義があって、試験もあります。多職種が参加した症例検討会や緩和ケア病院での実習もありました。

現在、テーマを設定し、がんに関する臨床研究を行っています。大学院では、論文の書き方や書くための作法を学んだり、論文作成・投稿に関してアドバイスしていただいたりしています。

 

業務の合間に通うのは想像していたより大変で、何とか修了したいと頑張っています。

 

 

スキルアップでご自身の将来は変わりそうですか?

 

これから医療業界もAI(人工知能)を活用したり、オートメーション化が進んだりしていくと思います。機械でできるのであれば…と調剤業務が人間から機械へ取って代わるなど、薬剤師が今当たり前のようにしている仕事が減ることもあると予想されます。

 

もちろん、その処方が正しいかどうかの最終チェックは人間が行わなければならないので、薬剤師の仕事が全てなくなるとは思いませんが、ただ作業としてこなしていく仕事は確実に減ってくるのではないでしょうか。つまり、スキルアップしていかなければ、医療職の中で生き残れないかも…と。逆にいえば、そちらへ思考をシフトすれば、薬剤師としてもずっと働けるし、患者さんにもよい医療を提供できるのでは、と思っています。

 

幸い、この病院は研修施設として認定されているので専門・認定薬剤師の資格も取りやすいです。先輩だけでなく後輩も熱心に専門や認定を取得していて、部内の約50人のうち、7人ががんに関する資格を持っています。自分のキャリアのためにも、患者さんのためにも、薬剤師それぞれができることの幅を広げるのはいいことだと考えています。

 

 

患者さんのために行うといえばチーム医療ですが、チームの中で薬剤師の役割は何だと思われますか?

 

私は、サッカーで例えると、薬剤師はチーム内の「ゴールキーパー」だと考えています。

絶対にミスできない立場ですね。

 

病院のフットサルチームでもキーパーをつとめる藤原さん(グリーンのユニフォーム)

 

例えば、私はがん専門薬剤師なので、がんの治療時にガイドラインと違う薬剤や用量が選択されたときは「何か理由があるんですか?」と質問します。ドクターとそういったディスカッションができるような薬剤師が多ければ、もっと患者さんによい治療が提供できると思います。

 

薬剤師から提案することで患者さんの治療効果を高められたり、副作用を軽減できたり、QOLを上げられることがあれば、医師にも進言しますし、ケアの充実や改善を看護師さんに改めて頼んだりしています。自分たちがいることで、多角的に患者さんにとってより良くなるように働きかけたり、患者さんが納得されるように努めることが役割ですし、そうなれるように心がけていますね。

 

 

薬剤師を目指す皆さんにメッセージをお願いします

 

臨床で働くと、幅広くいろいろなことができます。経験が増えますし、何よりずっと刺激があってモチベーションを保てます。また、日赤和歌山医療センター薬剤部では、病院の規模も大きく、できることも多いと思います。学会発表に行ったり、国際救援や災害救護で派遣されたりと、幅広い選択肢があると感じています。

 

中途採用も積極的で、私としても外から来てくださると非常にうれしいです。他施設や企業の知識や経験をシェアしてもらえることで、より働きやすい環境になることも期待できますしね。新卒採用、中途採用ともに歓迎しているので、病院薬剤師として頑張ってみたいなと思ったら、ぜひ日赤和歌山医療センターを考えて欲しいですね。

 

 

藤原 大一朗(ふじわら だいちろう)

2008年5月入職。

日本医療薬学会がん専門薬剤師、日本医療薬学会認定薬剤師。

東日本大震災では、日赤常備救護班第1班で薬剤師として発災当日から岩手県へ派遣。

 

 

 

 

 

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