少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。

加齢による変化には…

2019/09/06

こころの扉 17

 

知人が「最近、涙もろくなっちゃって…歳かしら?」と話していました。

 

物忘れと同様に、「涙もろさ」は加齢を実感する変化の一つのようです。実際に、涙もろさを「老化によって大脳の前頭葉に機能低下が起こったことで感情抑制が十分にできなくなった結果」とする説もありますが、「涙もろさ」には他にも理由がありそうです。

 

ここでまず、「涙もろい」と「泣き虫」は異なるという前提についてお話しなければなりません。

 

一般に「泣き虫」という表現は、主に自分に向けられた叱責や辛い出来事によって泣くことを指しており、小さな子どもなど未熟であるほどその傾向は強いといえます。

 

一方、「涙もろい」というのは、他者(時には見知らぬ人)に起きた出来事を見聞きした時にも起こる流涙のことです。

 

これは、他者への共感機能が十分育っていない小さな子どもには起こりません。共感は、自分の経験やその時の感情に照らし合わせて可能になるものなので、歳を重ね経験豊富になったことによって相手への共感に基づいた涙もろさが起きやすくなるのでしょう。

 

このように、私たちが年齢とともに涙もろくなるのには生物学的要因だけではなく、経験値が深く関係しています。

 

しかし中には、映画やドラマではよく泣くが、自分や周囲で起きた出来事ではあまり泣かないという人もいます。このような人は、日ごろ、自分自身の感情には蓋をしている可能性があります。

 

現実世界の中で抑えている感情のバランスを取るために、映画などのストーリーの中でのみ感情体験をしているのかもしれません。

 

出来事やそれが起きたときの気持ちを語ったり、あるいは紙に書きだしてみるなどして、自分自身の感情をイキイキと感じることが大切です。

 

 

 

坂田 真穂(さかた まほ)

日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー

相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『いのちを巡る臨床―生と死のあわいにいきる臨床の叡智』(創元社, 2018)など。

 

 

日赤和歌山医療センターHP

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