少し知っておくと役に立つかもしれない、こころに関するおはなしです。目に見えないものであるけれど、わたしたちの心は日々ゆらぎ、動いています。そんなときに思い出してもらえたら、ちょっと楽になるかもしれない内容をお届けします。

ひとりで気軽に行けるところ…

2019/08/02

 

「あなたの一番大切なものは何ですか?」

 

この質問を世界の国々で尋ねたところ、「家族や子ども」という回答が最も多かったという研究があります。

 

日本でも「家族や子ども」という回答が圧倒的1位であり、2位に「両親、兄弟、姉妹、親戚」、3位に「職業や仕事」が続いていました。家族や仕事を大切に思っているだけでなく、実際に、1日の大半を家庭や職場で過ごしている人も多いでしょう。

 

知人の一人に仕事を生きがいにしながらも、終業後はまっすぐ帰宅して、子どもの遊び相手をしたり、家事を分担しているマイホームパパがいます。

 

けれども、そんな彼の小さな楽しみは、月に数回、一人で行きつけの喫茶店に行き、そこでコーヒーを飲みながら、マスターや他のお客さんと他愛ないおしゃべりをすることだそうです。

 

仕事と家庭に全エネルギーを注いでいる印象があったので、「一人で」というところに一瞬意外性を感じました。

 

しかし、アメリカの社会学者のオルデンバーグによると、現代人には、生活の場である家庭や、長い時間を過ごす職場とは異なる、サードプレイス(第3の場所)が必要なのだそうです。

 

サードプレイスとは、簡単に言えば、家庭や会社のように深い人間関係がある場所ではなく、気が向いたときにふらっと行けて、好きな時に帰れる気軽な場所のことです。

 

先ほど登場した知人も、一人で行く喫茶店では、誰にも気兼ねせずに過ごせることで気持ちが落ち着き、心身の疲れを休められるのでしょう。

 

オルデンバーグは、カフェや公園のような、人が気軽に集まり交流できる場所を提案していますが、サードプレイスを心身が休まる気軽な場所だと考えるのならば、「一人で海を眺める」などでもかまわないでしょう。

 

日頃、家庭や職場で周囲に気配りをしたり、重い責任を背負っている人ほど、「役割」を横に置き、自分自身に立ち戻れる場所をもてれば良いですね。

 

 

坂田 真穂

日本赤十字社和歌山医療センター公認心理師(非常勤)、2005年より職員のメンタルヘルス支援を担当。臨床心理士、シニア産業カウンセラー

相愛大学准教授、専門は臨床心理学。教育学博士。主な著書に『いのちを巡る臨床―生と死のあわいにいきる臨床の叡智』(創元社, 2018)など。

日赤和歌山医療センターHP

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