海外の紛争・災害などに対して、医師や看護師などの職員を派遣し、国境や宗教、人種を超えて人の命と健康、尊厳を守る活動に取り組んでいます。

ノルウェー赤十字社主催の病院型緊急医療ユニット研修に参加

2019/02/16

国際赤十字・赤新月社連盟は、大規模災害発生後により効果的に活動するために、緊急対応ユニットを世界各地に派遣しています。

 

このユニットとは、発災直後に派遣できる事前に訓練された要員、標準化された装備、医療施設を自己完結型で運営することの総称です。つまり、人(ヒト)・物(モノ)・箱(ハコ)の3点をセットにして準備しています。ユニットの規模は、診療所の機能を持つものから、入院病床があるより大規模な病院機能を持つものまであります。

 

2000年から日本赤十字社(日赤)は、海外へ緊急対応ユニットを派遣し、被災地で仮設診療所を運営してきました。一方、ノルウェー赤十字社は、病院機能をもつ緊対応療ユニットの運営実績があり、最近ではバングラデシュ南部の医療救援事業で病院型ユニットを展開しました。

 

日赤は、診療所型ユニットに加え、病院型ユニットを保有することを計画していて、運営実績のある海外の赤十字社から、人材の育成や必要な装備を教えてもらい、準備しています。

 

私は、2018年3月から6月まで感染症専門医としてバングラデシュ南部に難民救援事業で派遣されたときに、実際のノルウェー赤十字社の病院型ユニットの活動を身近に見聞きしていたこともあり、今回、日赤版病院型緊急対応ユニットの設立にむけて、知識の習得と連携強化のため、この研修に参加してきました。

 

研修は、2018年の8月末にノルウェーの首都オスロから車で2時間程度南にあるノルウェー赤十字社の研修施設で行われました。世界各地から参加者が集まり、職種は、医師や看護師などの医療職の他、エンジニア(上下水道、電気、テント設営の専門家)も参加していました。

テント設営の途中

 

6日間の研修のうち前半3日間は講義で、後半3日間は屋外で実際にテントを建てて、病院型ユニットの運営をシミュレーションした実地訓練を行いました。

 

シミュレーション研修はボランティアが協力し、患者さんのトリアージ(重症度にあわせて診療の順番を決めたり、診療する場所を分けたりすること)や疾患のマネージメント(治療の計画を立てたり、経過に合わせた治療を施すこと)だけでなく、緊急事態発生時の対処や、コレラの流行を想定した対応など、多くの訓練が用意されていました。

 

研修4日目の夜に、コレラ流行のシナリオ(訓練想定)が参加者に突然伝えられました。コレラは、下痢を主症状とする病気です。災害後など衛生環境が悪化し、飲料水などが汚染されて地域で大規模な流行が発生することがあります。

 

患者さんは脱水になり、容態が急激に悪化することがあるので、特別な治療施設が必要になります。参加者は、コレラの患者さんを治療するための施設を大急ぎで設営しなければなりません。夜遅くに、参加者全員でテントを持ち上げて配置換えを行いました。

 

参加者全員でテントの土台を持ち上げようとしているところ

 

私は、感染症科医ということもあり、中心的な役割を任せられました。医師や看護師など職種間での連携がうまくいき、シミュレーション後のフィードバック(振り返り、反省会)では、非常に高い評価をいただきました。

コレラ対応のミーティング(著者が参加者に感染対策などの説明をしているところ)

 

病院型ユニットを運営するためには、仮設診療所と比べてエンジニアの役割が非常に大きいと感じました。入院病床や手術室の運営には、多くの医療機材、電気、上下水道の管理が必要だからです。

 

今回、一緒に研修に参加したノルウェー赤十字社のエンジニア達は、専門的な知識を持っていて、病院型ユニットの設置や撤収が非常にスムーズでした。現在、日赤に登録されている海外派遣要員の多くは医療従事者なので、設備などを担当するエンジニアの数はまだ十分ではありません。

 

今後、日本赤十字社が病院型ユニットを導入していくには、専門知識と経験のあるエンジニアの確保が必要だと感じました。

 

私も、今回の研修での経験を活かして、災害発生後の緊急医療支援や感染症流行時の感染対策に携わっていきたいと考えています。

 

 

「和歌山から世界へ」では、様々な国際活動をレポートしていきます。出発式のほかにも、現地での活動、帰国報告会、国際人道法や語学・熱帯医学などの研修風景などをお届けします。乞うご期待!

 

 

詳しくはこちら

日赤和歌山医療センターHP

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