がん放射線治療の第一人者であり、高度医療に取り組んできた平岡院長が、がんについてわかりやすく解説します。ティーカップを片手にお気軽にお読みください。

がんは予防の時代

2020/04/21

令和の現在、がんは盲腸よりも多くの人がかかる病気になりました。これまでもお伝えしてきたとおり、私たちの半数は一生に一度はがんにかかります。

 

 

ただ、それと同時に治療法も確立され、早期発見で内視鏡でがんが取り除けるような状態であれば、胃がんや大腸がんなどでは97%もの人が治ると報告されています。ですから、怖い病気ではあるけれど、昔と比べて「かかったら、もうお終いだ」というほどの病気ではなくなりました。

 

それでも、誰もが治るとは全くいえませんし、治療は大変ですから、できればかかりなくないですね。早期発見のためにはがん検診の頻度を高めなければなりませんが、和歌山県は広く山間部も多いので、地域によっては検診を受けるために病院まで行く道のりが大変で億劫という方も多いでしょう。また、わざわざ休みを取って病院に行くのを、ついつい後回しにしてしまうという方もおられるでしょう。

 

そこで、「がん予防」の意識が重要になってきます。私たちはがん治療だけでなく、いかにして予防するかというサポートも行っています。

 

 

健康習慣の見直しでがんの発生率は下げられる

これまでの研究から、がんの発生には健康習慣も大きく関わっていることがわかってきています。

 

◯ 喫煙

◯ 飲酒

◯ 食習慣(塩分)

◯ 運動習慣

◯ 肥満度

 

このような項目が、がんに関係すると国立がん研究センターも発表しています。タバコを吸い、お酒を飲み、味の濃いものを食べて、運動をせず、年々太ってしまう。このような生活を続けていると、がんに罹るリスクが高まると言われています。

 

和歌山県に住む人たちを見てみると、全国と比べて喫煙率も高く、定期的な運動をせず歩かない人が多いというデータが、和歌山県福祉保健部健康局から出ています。つまり、がんにかかるリスクにさらされている人が大勢いるということです。

 

タバコを吸って、もしくは長年タバコを吸っていて、近所へ行くにも車で移動し、コンビニや外食で好きなものを食べていたり、毎晩の晩酌が欠かせないという人が、皆さんの周りにも結構いらっしゃるのではないでしょうか?

 

 

この5つの項目をクリアすると、がんの発生率は4割くらい違うというデータもあります。意識してがんの予防に取り組むのは、ご自身のためにとても大切なことです。

 

少しでも意識を高めていただくため、私たちは「がん教育」の一環として、患者さん・地域向け広報誌「健康だより」やホームページ、ラジオなどの媒体を通して健康維持に役立つ情報を発信しています。そういった活動は治療とは違いますが、皆さんの健康を守る医療機関としてやらなくてはならないサポートだと思っています。

 

 

ストレスにも注意を払って生活しましょう

これらの生活習慣に加えて、私は心のあり方もがんに関わると考えています。ストレスは定量化しづらいのであまりデータとして出てきませんが、医療に長く携わっていると、ストレスは病気に影響していると感じることがあります。

 

衣食住、体の状態、心のあり方、ストレスなどが総合して病気につながっています。バランスの良い生活を心がけ、ストレスを少しでも軽減できるようにしていきましょう。

 

ストレスの代表格に、不安があります。不安があると、落ち着かなくなり、ささいなことでイライラしたり、気持ちが落ち込みやすくなったりしてしまいます。わからないことが多いと、不安が増大するといわれています。

 

そこで、皆さんのストレスを減らすお手伝いとして、ご自身の健康状態を知っていただくために、当センターでは各種健康診断や人間ドックをご用意しています。ご自身の体の状態を理解するとストレスが減りますし、必要以上の心配をせずに日常生活が送れます。場合によっては、早期発見につながるでしょう。

 

 

このままでいいのかと心配しながら過ごさず、「問題ない」とか「今の段階では、○○に気をつけましょう」といった医師からのアドバイスを受け取ることが大切です。きちんと検査を受け、安心して健やかな日常を送りましょう。

 

各企業検診、特定健診などはもちろん、人間ドックも様々なコースを用意しています。がんに特化して全身をしっかり調べるのであれば、1泊2日のプレミアム2日ドックがあります。

 

 

 

平岡 眞寛(ひらおか まさひろ)

日本赤十字社和歌山医療センター名誉院長

1995年43才で京都大学 放射線医学講座・腫瘍放射線科学(現:放射線医学講座 放射線腫瘍学・画像応用治療学)教授就任、京都大学初代がんセンター長。日本放射線腫瘍学会理事長、アジア放射線腫瘍学会連合理事長、日本がん治療認定医機構理事長、厚生労働省がん対策推進協議会専門委員などを務めるがん放射線治療の第一人者。世界初の国産「追尾照射を可能とした次世代型四次元放射線治療装置」を開発し、経済産業大臣賞、文部科学大臣賞、JCA-CHAAO賞等を受賞。2016年4月から2022年3月まで当医療センター院長。2021年1月から、がんセンターで放射線治療(週1回外来診察あり)を担当。

 

 

 

 

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

Share

この記事を気に入ったならシェアしよう!