海外の紛争・災害などに対して、医師や看護師などの職員を派遣し、国境や宗教、人種を超えて人の命と健康、尊厳を守る活動に取り組んでいます。

ドイツ赤十字社感染症対策研修を終えて

2020/02/15

2019年12月に中国湖北省武漢市から発生した新型コロナウイルスによる感染が拡大しています。中国以外にも日本を含めたアジア各国、アメリカ、ヨーロッパにも飛び火し、世界保健機関(WHO)は2020年1月30日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言しました。まさに、アウトブレイクと言えるでしょう。

 

ちなみに、これまでにPHEICに指定された事態は、2009年の新型インフルエンザの世界的な流行、2014年と2018-2019年のエボラ出血熱の流行、2015年のジカ熱の世界的な流行などです。

 

そもそも感染症の「アウトブレイク」とは、どういった状態かご存じでしょうか?

 

簡単に言えば、「通常の発生頻度よりも明らかに多く感染が発生している状態」や「通常発生しないような特殊な感染が発生している状態」を指します。

 

例えば、エボラ出血熱自体は1976年にアフリカで見つかったウイルスですが、常に流行している訳ではなく、突発的に感染が異常増加(アウトブレイク)しています。

 

一方、今回の新型コロナウイルス流行では、その名の通り、これまで発生のなかった新しい感染症が増加しています。

 

感染症アウトブレイク対応研修

今回、私はドイツ赤十字社が主催する「感染症アウトブレイク対応研修」に、2019年11月25日~29日までの5日間参加しました。世界各国の赤十字・赤新月社から参加者が集まり、医療チームに分かれて仮想シミュレーションを行いました。

 

防護服の着脱訓練の様子

 

感染症アウトブレイク対応の分野で最も先進しているドイツ赤十字社は、豊富な専門家や連邦政府および陸軍と連携した研究施設などを有し、充実した体制をとっています。

 

今回の研修はドイツ郊外にある陸軍施設で行われましたが、そこにはエボラ出血熱ウイルスなどの高病原体を扱うバイオセーフティレベル4に分類される専門施設があって、さらには周囲への汚染リスク管理対策も講じられていました。個人での施設撮影は禁止されており、携帯の電波も遮断されていましたが、そのため非常に濃密な研修に集中して参加することができました。

 

 

具体的には、2018-2019年にコンゴ人民共和国でエボラ出血熱が流行した時の経験を踏まえた感染予防策や、個人防護具(PPE、写真にあるような全身を覆う宇宙服のような防護服)の正しい着脱方法、検体の取り扱い、治療方法などについての研修がありました。

 

研修をふりかって

 コンゴでのエボラ出血熱流行時に現地で活動した医師が、マスメディアの誤った情報や地域住民間のデマなどで、患者さんが医療機関を適切に受診せず感染が拡大したり、病院をはじめとする医療機関が攻撃対象となったりして、活動継続が困難となった話をしていました。地域の住民と協力し、正しい情報発信で信頼を得るよう努めることが重要です。

 

検体を取り扱う研修に参加する筆者(真ん中)

 

流行している新型コロナウイルスに対しては、感染経路や感染力について徐々に明らかになってきていますが、エボラ出血熱対応時のような個人防護具は必要なさそうです。感染に対し過剰に恐れるのではなく、それぞれの感染症に応じて適切な感染予防策で対応していくことを心掛けたいと思います。

 

  日本赤十字社和歌山医療センター 国際医療救援部  

 

 

「和歌山から世界へ」では、様々な国際活動をレポートしていきます。次回は5月にリリース予定です。出発式のほかにも、現地での活動、帰国報告会、国際人道法や語学・熱帯医学などの研修風景などをお届けします。乞うご期待!

 

詳しくはこちら

日本赤十字社 和歌山医療センター病院サイトはこちら

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